すべてが猫になる

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涙 流れるままに  (ねこ4.6匹)

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島田荘司著。光文社文庫


吉敷竹史の元妻・加納通子は、「首なし男」に追われる幻影に悩まされていた。その原因は、数奇な
運命に翻弄されてきた自らの半生にあるのではないかと思い至る。過って級友を死なせた事件。
婚礼の日に自殺した麻衣子と、直後の母の変死。そして柿の木の根本に埋めたあるものの忌まわしい
記憶!?通子は少女時代に体験した数々の悲劇の真相を探る決心をしたが……。(上巻裏表紙引用)




じーーーーーん(T_T)。。。感動して言葉もないぜよ。

早速ですが、堂々とネタバレしますので未読の方はこれにてごめん。↓


















『龍臥亭事件』より長いし、主人公がかの通子さんということであまり期待せず、むしろ課題を
押しつけられた生徒のような気分で読み始めましたが。意外や意外、おんもしろいんだこれがまた。
今までちらほらとしか語られなかった通子さんの不幸が不幸を呼ぶ過去が丁寧に綴られ、過去作品で
不可解だった彼女の不審な行動や人をイライラさせる性格、そして吉敷さんとの絡みで解けなかった
もやもやが、この作品で全て払拭されてしまいます。
ここまで書かなくてもいいだろうよ、と思うような場面も赤裸々に語られ^^;、焼き直しに近い
部分も一部あるのですが、まあ確認ということで。

しかし通子さんの悲惨さは筋金入りですな!
農薬?を過って近所の男子に飲ませてしまった事が発端ですが、まあ、子供だしそうと知ってた
わけじゃないしねえ。。非がないわけじゃないんですが、警察を恐れる心理とか、死んだ子供の
兄弟に尾行されて怯える様とか、気持ちがわかりすぎて可哀想でたまらなかったです。。
それはさておき、それからもえげつない事件が通子さんの身に次々起こりますねえ。。

しかししかーし、一郎や次郎の言いなりになる所とか、聴き込みを続けて関わる男性に
ホテルで襲われたりとか、これって本当に通子さんが純粋な被害者とは言えないような。。
最後の方ではもう「ええかげんにせい」と思ってしまったんですが^^;;
淫乱である事はまっっっったくの吉敷の誤解である、という事が事の真相かと思いきや、
そうじゃないんですね。。。血筋って事でいいのかな^^;;

さらに、並行して進む恩田冤罪事件の捜査に熱く燃える吉敷さん。演説には引きましたが、
やはりこの事件が絡むから面白いわけですね。四十年も裁判で闘った夫婦とその支援者。
そこで毎度おなじみの吉敷の目の上のたんこぶとも言うべき上司・峯脇(名前判明^^;)が
重要な役どころとして出てくるわけです。吉敷と峯脇の因縁もこれにて終結。ああ長かった。


冤罪も晴れ、峯脇は去り、吉敷さんは昇進、娘ゆき子とも出会い、文句のつけどころのない
ラスト。今回の吉敷さんは本当に熱かった。刑事として、人として、信じて来たものが
報われたかのようなホームでの見送りのシーンや、ゆき子の肌に触れ涙を流す吉敷さんには
心から痺れました。

これで、吉敷シリーズは完結したのでしょうか?



余談ですが、「これさえなければ」と思ったシーンを抜粋。吉敷が聴き込みをした、恩田の
息子の妻の台詞。
『なんかこの方、勘違いなさってませーん』
『なんか、そばで聞いてると、ちょっと失礼だけど、笑っちゃって笑っちゃって、なんか眉間に
一本しわ作って、精一杯格好つけちゃって、もう駄目、私おかしい!すごい深刻な話してらっしゃる
みたいだけどぉ、言ってる内容は高校生みたいだし、一部にファンがいらっしゃるのかもしれない
けど、ちょっと恥ずかしくて、私もう駄目ですぅ』

…………おい、いくつだこの人?????(ーー;)初対面の吉敷に言った台詞がこれ。
これ以来登場しないんだけど、あまりに強烈だったので一番忘れられないシーンとなりました^^;