すべてが猫になる

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ロマンティスト狂い咲き  (ねこ3.7匹)

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小川勝己著。早川書房


おれは売れない作家ーーアルバイトで糊口を凌ぐ毎日や、妻との冷え切った関係にはいいかげん
うんざりだった。担当編集者の伏見裕子ーーおれがひそかに想いを寄せる人妻。意外なことに
向こうからも誘いをかけてきた。彼女の夫が死ねば、彼女はおれだけのものになる。運命の女の
言葉は、おれの耳にはこう聞こえた……”夫を殺せ”。欲望と犯罪に溺れる男女を、鬼才が
リビドーを注ぎ込んで描いた純愛小説!(裏表紙引用)


↑「純愛小説!」って……^^;;純愛小説じゃないだろう。。


ということで、しつこくハマってます小川さん。まだこれからあと1冊読むんだ~ぃ。
久々に読んだ長編です。短編もいいですが、長編もらしさを失わないのがさすが小川さん。
初期の本格推理や暴力変態小説とはまた違う雰囲気ですね。サスペンスの分類に入れていいとは
思いますが、これぞ本領発揮のクライム・ノベル(姉貴さよなら~)。それほど殺人、暴力の
描写はキツくはない(小川さんにしては)のですが、主人公はじめ壊れた心を持った人物が
目白押し。編集者の内海はまともだったかな。


面白いのは、伏見裕子が主人公に惹かれた理由が全然わからない上に目的があるのかないのかも
曖昧な点。主人公が裕子に惹かれるのはわかるとしても、大好きな内海を殺そうとする点。
一番壊れキャラとして光っていたのは妻の美紅ですが。。
小川さんが描くと、普通なら「つっこみどころ」になる要素が「壊れてるから」という
理由でストンと納得させられてしまう。何してもOK、どう終わってもアリ、なこの世界観が
自分にはツボなのだな。

このお話が「純愛」と言えばその通りかもしれないけど、自分にはエゴイストのお話に
見えたなあ。ラストの展開を読めば丸分かりだと思う。もし本当に純愛を貫いたと言いたいの
だったら、この人物も破滅するべきじゃないかな?