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天国からの銃弾  (ねこ4.2匹)

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島田荘司著。光文社文庫


もと消防署だった建物を購入した男は、施設の一部として残った「見張り塔」から、毎日写真を
撮りつづけた。聳え立つ富士を背景に、ソープランドの屋上に立つ”自由の女神像”。ある日、
その女神の目が異様に赤く光る瞬間があることに気づいたとき、男の平穏な日常を襲う衝撃的な
事件が…。(表題作)奇抜な着想で鬼才が放つ、トリック&サスペンスの傑作!(裏表紙引用)



吉敷も御手洗も出て来ない、ノンシリーズ3編収録の短編集です。中編集と言っても良いかな。
今回はハズレなし!なんか短編集を読むと毎回「し、島田さん……!」と思うねえ。吉敷シリーズの
長編を読み続けているとファンをやめたくなる事もしばしばなのだけど^^;


『ドアX』
いきなり恒例の間違った女性観が延々と女性の口を借りて綴られますが、それは置いといて。
なんとなく、本当はこうなんだろうな、と思わせるのが絶妙です。あるスター志望の才能ある
女性。彼女はある日、偶然出会った易者に「Xという文字の入った店に入れば成功する」という
予言をされ。。
独特の幻想的とも言えるお話ですが、最後に現実的で、さらに運命的な偶然を盛り込み物語を
感動的に盛り上げて行くのがさすがです。うるうる。


首都高速の亡霊』
社会派らしい題材。先日読んだ「Yのなんとか^^;」に似た構造かと思いきや。
犯罪を隠そうとする男女と、エリートサラリーマンと冴えない部下の間に芽生えた殺意。
二つの繋がり方も見事ですが、人間の弱さと、積み上げて来たものの真実が取り沙汰され
悲哀に満ちた物語に仕上がっています。めそめそ。


『天国からの銃弾』
表紙が怖いのは無視しましょう^^;
タイトルの格好良さと裏腹に、あまり興味の湧かない展開だったのですが。
その赤い目が光る理由についても突拍子がなさすぎて逆に「へー。」としか思えず。

しかし、その後から怒濤のドラマが押し寄せて来ました!すれっからしの自分でも、まさか
こんな真相が待っているとは想像も出来ず。やはり島田さんは、「男」を描くべきです。
敗残者であっても、プライドやささやかな幸せ、ポリシーが光りますね。じーん。



素晴らしい短編集でした。これはお薦めだなあ^^