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ジャムの真昼  (ねこ4.9匹)

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皆川博子著。集英社


beckさんに負けていられないぜー。
これで皆川さんの本5冊目。またまた素晴らしい本に出会ってしまいました。
もうねこ点とかわけがわからなくなってます。とりあえず『聖女の島』と同等、『猫舌男爵』より
上、とゆきあやのアンテナが評価しました。
もう素晴らし過ぎて何を書いていいのやらわからん^^;


『森の娘』
インパクトのある美しい写真を表紙に、摩訶不思議なお話が!!
謎のカメラマンと手に障害を持った男のエピローグ。ツアー旅行で(東南アジア??)出会った
若いコンダクターへの想いと、かしましい老婆たち。
もう一体なんだんだ。どこに連れて行かれたのかわからない世界。暗く閉じる世界の精神的な
ポジティブさと絶望感。ああ、どう説明していいかわからない。


『夜のポーター』
昔の人気タレント、「双子ちゃん」の片割れは亡くなり、一方は老いて世間から忘れられたが、
ただ一人、彼女を忘れていないホテルのポーターがいた。。
これは本当に、表紙の写真にやられました。一見なんてことのない子供たちの遊びの風景ですが、
読む前に「この子かっこいいなあ」と魅入っていたのが正解でした。
もう、身が切られるかと思うほど、胸がぎゅうっと締め付けられました。これは喩えではなく、
感動しすぎてゆきあやの腕に鳥肌が立っていたのです。


『ジャムの真昼』
戦争の空しさというのは、貧困が子供に与える影響という事でしょうか。
時系列が混乱したので二度読みしました。これはかなり重苦しいお話ですが、素晴らしかった。


『おまえの部屋』
片腕をなくした父親。息子は愛情が足りないと感じるまま、全てを理解するまでに成長した。
これも心臓を鷲掴みです。
ラストの展開は、これでこそ物語だと思いました。悲しみや現実を受け入れる術というのは
どこで身につけて来るものなのでしょう。


水の女』『光る輪』『少女戴冠』
すいません、ここまでのお話に感動しすぎて意識が朦朧としながら読んでいたかもしれません。
もちろんこの3編も良かった。心が壊れて行く様が美しく哀しく、詩的でうっとりします。



いや~、もう何書いていいかわからない、ほんとに^^;
決してどれもわかりやすいお話ではないのですが、胸にスッと入って来るんですよね。
文章が洗練されているし、知らない異国のお話なのにイメージが浮かぶ。
皆川さん、神様だなあ。