すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

きつねのはなし  (ねこ3.8匹)

イメージ 1

森見登美彦著。新潮社。


京の骨董店を舞台に現代の「百物語」が幕を開く。注目の俊英が放つ驚愕の新作。細長く薄気味悪い
座敷に棲む狐面の男。闇と夜の狭間のような仄暗い空間で囁かれた奇妙な取引。私が差し出した
ものは、そして失ったものは、あれは何だったのか。さらに次々怒る怪異の結末はーー。端正な
筆致で紡がれ、妖しくも美しい幻燈に彩られた奇譚集。(あらすじ引用)



おおお、開架にあった(驚)^^;さすが大阪を代表する図書館。。浦賀や篠田秀幸がすべて
開架に揃っているだけのことはある。引っ越しに伴い予約キャンセルしてた本だったので
嬉しいよ(T^T)。。


と、いうわけで。わくわくと読み始めた森見さんの怪談ということで。
この人が書いたら絶対どんなジャンルでも面白い、と確信していたらやはりその通りで、
満足満足。

『きつねのはなし』
一番好みでしたね~。正体の知れない天城さんの存在も光っていたけれど、実際本当に
不思議だったのは別の人だった。ひやっと寒々しくなるような、ぞっとするお話でした。
こういう怖がらせ方というのは難しいと思うんだよね。凄いわぁ。

『果実の中の籠』
「先輩」という文字を見ると森見さん、という感じがしますね。語り手の青年はごく普通なので、
彼から見た先輩や彼女の姿が生きています。そういう事だったのか、というサプライズもあって
それが寂しさと先輩の憎めない弱い姿として描かれています。
その真実が、主人公でない別の第三者から見るとどう映るのか。個人的にはそれが興味深かった
です。

『魔』
通り魔の存在と、私達の別世界に潜む「魔」の存在と。
これはオチが上手いですね。ここまで読んで来て感じるのは、全体的に哀しく、優しくはない
世の中の常が繰り広げられる作品集なのかな、ということ。雰囲気は優しげなのですが。

『水神』
なんとなく、面白い順に収録されてしまった短編集ですね^^;
印象に残ってしまったのは、水が干上がってしまった後の鯉の姿。。この方の作品は、風景や
人物もさることながら、映像的でいいんですよね。だからちょっと辛い現場が映ると
ショッキングです。これも摩訶不思議な恐ろしいお話ですね。『果実~』『魔』と違い、
ミステリ的に落とす部分が薄かったので、それがまた良かったかな。


以上。堪能いたしました。
ちょっと二日酔い中に読んでしまったので元気な時にもう一度読みたい作品ですね。
季節的には正解でした^^