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ラスト・レース -1986冬物語- (ねこ3.5匹)

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柴田よしき著。文春文庫。


社内恋愛に破れ憂鬱な毎日を送る秋穂は、宝石店に忘れられた指輪を持ち帰った夜、レイプされて
しまう。翌日近くのマンションでOLが殺された。自分は人違いで襲われたのでは?悩む秋穂の前に
現れたレイプ犯の二人は、誰かに嵌められたのだと語る。時代の流れに乗り損ねた男女のラヴ&
クライム・ノヴェル。(裏表紙引用)



「さ行作家」積読本が島田さん&柴田さんしかないのでしばらくこういうローテーションが
続きます^^;この二人の連続読みってそう苦じゃないんですよ。どちらも読みやすいし、
作風が大違いなので。

で、本書。面白くて一気読み。なのに、文句がやたら多いという不思議体験。
主人公の秋穂は普通の一人暮らしのOLなのですが、バブルの波に乗り損ねた、会社でも少し
浮いた存在の芯のふらふらした女性。ずばり好感度ゼロ。
あらすじに「指輪を持ち帰った夜」と書いてありますが、正しくは「指輪をちょろまかした」の
間違いです。普通盗むか?^^;そんな事をしているから罰が当たったんだとは言いませんが、
異性関係もだらしないし、性格も卑屈だし、同情票は得られにくいと思います。
近藤史恵さんの描く女性なども”性格の悪い”人がよく出て来ますが、それの女性として共感出来る
悪意の表現とは違い、秋穂の女性として以前に人間として少し神経を疑う描き方は”うまい”とは
言えない気が。他人の不幸を喜ぶ大衆心理が取り沙汰されている作品ですが、秋穂の”一般の
価値観”に自分が合わせようとする性癖が災いを呼びこんでいる気がするのです。

テーマはそれと対極なので、成長ものとしては高い授業料だったという印象でしたね。

好きではないけど、読ませる力で言えば今まで読んで来た作品に劣らないものではないでしょうか。