すべてが猫になる

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第5位 『シャム双生児の秘密』 著/エラリー・クイーン

だって好きなんだもん。

この企画もようやく山場にさしかかって参りました。実は、この第5位が今までで一番緊張して
います。
自分でも凄く楽しみにしていた記事の一つでありますが、企画開始当初はここまで皆さんに盛り上げて
もらえるとは想像していなかったので、ちょっと本書は今となっては気まずいです。。
ここまで読んでもらって、「?」と思っている方はもしかしたらそれほどエラリー・クイーン
詳しくはない方かもしれませんね。そういう方にはつまらない記事だろうし、海外古典に傾倒して
らっしゃる方には「どうしてこの作品が5位に登場するんだ?」と不審に思われるのではないかと
びくびくしておりまする。。

国名シリーズの七作目にあたる本書は、その怪奇性とミステリとしての構造が今までのパターンと
違う為に”異色作”という位置づけをされており、はっきり言ってそれほどファンに人気のある
作品ではありません。恒例の”読者への挑戦状”が挿入されておらず、ダイイングメッセージの
解読が日本人には困難である事、犯人特定の方法が理論的に完全とは言えない事、エラリーの推理に
キレがなく、二度も失敗を重ねた事など、様々な理由が挙げられます。



と、ここまでは自分の力だけで書いた記事とは言えないのですが、一応”そこを評価してるんじゃ
ないよ”というおことわり、という感じで。


自分はエラリー・クイーンが好きとは言っても、ただほぼ全作読んでいるというだけの読者。
国名シリーズのベスト3が『シャム』『チャイナ・オレンジ』『ニッポン樫鳥』しかも次は
アメリカ銃』だと言うから、いかに本格推理を正当に評価するのに向いていないかが
わかろうと言うものです。普通挙げるなら『エジプト十字架』だろ^^;
しかも、『途中の家』より『ドラゴンの歯』、『災厄の町』より『三角形の第四辺』が好きだし
『九尾の猫』の良さがわからないし『第八の日』で号泣したし国名シリーズよりドルリー・レーン
ものの方が面白いと思っているし^^;


話それまくった。。。

えーと、本書との出会いはやはり実家に置いてあった本棚から。たしか新潮文庫だった。中学生
ぐらいだったか。当時は怖い本(乱歩など)に異常な魅力を感じていた時期だったので、
タイトルの不気味さと、ボロボロで茶色く変色していた本が異様に恐ろしさを醸し出しているように
見えておりました。読む勇気がなかなかなかったけど。。

休暇でドライヴ中だったクイーン親子が山火事に遭い、退路を断たれてしまい不気味な山荘に
辿り着く、という設定。山道で出会ったおかしな男や、山荘の住人の腹に一物持っているかのような
怪しさ、次々登場するのは謎の上流階級婦人、陽気で微笑ましいシャム双生児の兄弟。。。
そこで発生するのは山荘の主人の他殺事件。遺体が握っていたのは半分に引きちぎられた
トランプのカード。外界から完全に遮断され、救助の見込みもない異常事態の中、エラリーは
真相解明に人生を賭ける。。。


本格推理と言えばクローズド・サークル設定は定番のようですが、国名シリーズでは通常警察が
介入します。本書は山火事という特殊な設定を用いていて、食糧も尽き、明日生きられるかも
危うい状況というドラマ性も秘めています。こんな時に犯人を暴いている場合ではないという
指摘すらもエラリーは突き放し、死の際にあっても冷静さと自分自身の矜持は失わないのです。
結果オーライと言えなくもない頼りなさも見せてくれますが^^;。
とにかく当時の自分にはこの雰囲気の禍々しさが言いようのない程の魅力でした。
特に好きなシーンは、クイーン警視の”蟹”発言、それに対するエラリーのしつこいツッコミ、
エラリーが二度目に犯人を指摘した時の独特の台詞です。そこのくだりでは思わず息が止まって
しまった事を思い出しますね。
(時代が古い為、読んだ当時ですら配慮に欠けると思うような表現が弱冠あるのですが)
ただ、今回読んだのはハヤカワものだったので、自分が記憶していた通りの訳文、構成では
なかったのが残念でした。創元で集めなおしているところなのですが、『シャム双子の謎』という
タイトル訳が自分には気に入らなくて^^;;『フランス・デパート殺人事件』『中国切手の謎』
とかなら面白いのでいっそ欲しいぐらいなんですが。。

あ、また話それた。
えーと。何も作品のフォローが出来ないまま終わらなくてはいけないようです。。
ラストシーン(そこはさすがに評判がいいらしい)や、エラリーが犯人に仕掛ける罠など、
面白味も多いと思うので、、あんまり本書は迫害されたくないなあ。^^;


ああ、記事書くの楽しかった。やめられなくなりそうなので締めに入ろう。
良かったらどなたか、国名シリーズで好きな3作はコレ!とか、クイーンならコレでしょ、とか、
本書についてのあなたの印象とか。コメントいただけたら嬉しいな。