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毒を売る女  (ねこ4.6匹)

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島田荘司著。光文社文庫



これぞ島田荘司!!(ノ^^)ノ♪(ノ^^)♪な8編収録の短編集!!!
1編ずつ御手洗潔と吉敷竹史が登場するので(潔は名前は出ないけど)、どのカテゴリに入れようか
迷いました^^;さて、この素晴らしい傑作揃いの作品を一つずつテンション高く感想を述べさせて
いただきやしょう^^


『毒を売る女』
上流家庭の妻たちに降りかかった悲劇。世間知らずの大道寺靖子の夫が梅毒の末期と判明し、当然
靖子にも感染しているとされた。一番親しく付き合いをしていた私に秘密を知られた靖子は、日々
私への嫌がらせを始める。。

今までケーキしか持って来なかった女が、自分が病気と知った途端に手作りの料理をおすそわけしに
やって来るというのが凄い^^;;つきまとわれる羽目になった妻の狂乱ぶりも凄いが。。
これ、やっぱり女同士だからこうなるんじゃないかなあ。他人の幸せがねたましく、自分だけが不幸に
なるのは許せない気持ちというのは古今東西変わらないですねえ。これが親友同士なら親身になれるの
でしょうが。

『乾いた都市』
スナックの美女に惚れてしまった冴えない中年サラリーマンの悲劇。

こういう男性って、どうして役職とかお金で女性にアピールをして来るんでしょうね。とにかく
このおっさんがムリしてお金持ってるフリをしてたり社長と嘘をついたりしているのが
哀れ通り越して面白かった^^;そして、プロローグとの繋がりが笑える。。女性がトイレで
用を足している(しかも大)時に男性にドアを開けられて、その女性がお店でキレているシーンから
始まるんですよこれ~^^;;;


『糸ノコとジグザグ』
人気ラジオ番組でDJをつとめる男の立ち上げた『3分フリートーク』に寄せられた、自殺を
ほのめかす暗号。これを阻止するべく、番組で視聴者と共に謎を解明しようとするお話。

暗号そのものはそれほどのサプライズではなかったのですが、視聴者参加型というのが
新鮮で面白かったです。まあ、リアリティはゼロなんですが、今の時代なら知らない人間のために
何百人という人間が一致団結して自殺を止める、なんて考えもつかないですよね。。
ちょっとホロッと来ました。そして、その思い出話を語るジャズバーでの意外な真相が感動的!!


『ガラスケース』
ちょっとSFのショートショートのようなお話です。島田さん、やるねえ。星新一ほどではないけど、
人類の進化過程をシビアに展開させていてさすがです。

『バイクの舞姫
死んだはずの元彼女が現れるお話なのですが、これはちょっと今までの作品を読んで来ていると
出来は普通ぐらいかなと思います。ミステリ要素とロマンスが合わさっていい感じではありますが。

ダイエット・コーラ
これもショートSF?一日を25時間にすれば人間は若返るとかなんとか。これも星新一に比べれば
コミカルさと風刺にパンチが足りないけど、十分及第点かも。

『土の殺意』
はい、吉敷さん登場~~~^^タイトルがいかにもですな。
完全な社会派ミステリーなのだけど、この作品、必要なかったですおいらには^^;;
テーマに骨がありすぎて短編ではもったいなかったかも。ある哀れな人間の人生の一幕として
これはこれでいいのかな。
うん、でも、この作品と『バイクの舞姫』がなかったら総評ねこ5匹も夢じゃなかったんだよね。。

『数字のある風景』
ショートSF。島田さん、こういうの得意みたいですね。3作も書いちゃってるし。
ある青年にだけ、世の中の言語が数字に聞こえるようになったというお話。最初ピンと来なかったの
ですが、オチの逆転が皮肉で好きだなあ。



以上~~。
いやあ、シリーズものでもないのだけど、島田さんはキャラクターに頼らなくてもストーリーテラー
して抜群の腕前がありますねえ(物によるのが悲しいところ^^;)。
大満足です。