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悪夢のエレベーター  (ねこ3.7匹)

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木下半太著。幻冬舎文庫


後頭部の強烈な痛みで目を覚ますと、緊急停止したエレベーターに、ヤクザ、オカマ、自殺願望の女と
閉じ込められていた。浮気相手の部屋から出てきたばかりなのに大ピンチ!?しかも、三人には犯罪歴
があることまで発覚。精神的に追い詰められた密室で、ついに事件が起こる。意外な黒幕は誰だ?
笑いと恐怖に満ちた傑作コメディサスペンス。(裏表紙引用)



目当ての本ではなかったし、話題作のわりに全く知らなかったのだけど、どうやら凄く面白いらしい。
もうすぐ舞台化されるらしい。続編の『悪夢の観覧車』が今売れ行き絶好調らしい。というわけで、
いそいそと買ってみた。半分は壁本覚悟だったのだけど。今流行りの携帯小説ケータイ小説、か?)
ってこんな感じなのかな、と上から目線で想像してみたり。

文章はまったく想像通りだったのだけど(深くは語るまい。「トキメキまくった」というくだりに
半笑いになったぐらいで)、止められない面白さや先の読めない怒濤の展開はこれまた馬鹿には
出来ない完成されたもの。ほぼエレベーター内の密室で繰り広げられるという設定は確かに
斬新だし、台詞まわしが今風でブラックな笑いを誘う点は舞台ではさぞかし楽しませてくれそうだ。
普通のサスペンス小説ならば安易すぎる驚愕の展開も、舞台映えしそうな個性的な登場人物も。


ただ、エレベーターに閉じ込められた真の経緯に関しては言う程斬新ではなかった。
さらに、ここに登場するキャラのように普段推理小説を読んでいれば身に付く最低限の知識が
あるならば、○紋や○因などを考慮に入れず行動しているのが不可解。
こういう小説では些細なリアリティの指摘など野暮なのだろうか。
少し残念に思うのは、過剰な宣伝文句が逆効果になる事への配慮がない事。勝手な言い分だが。
書評家を標榜していらっしゃる方が「推理小説は最後から読んで犯人を知ってから読む事がある。
だってその方が安心して読める。だけどこれは最初から読め」などという解説は不適切では
ないだろうか。確かに退屈させない面白さだったが、そこまで”はしゃぐ”ほどかと言われると
なんだかねえ。