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双樹に赤 鴉の暗  (ねこ3.9匹)

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高里椎奈著。講談社文庫。


貴金属店窃盗犯が罪悪感から自殺した。疑う余地のない決着に得体の知れない違和感を覚えた刑事の
高遠は、事件の洗い直しに乗り出した。薬屋探偵三人組が別方向に調査を進めるなか、鍵を握る
気弱なサラリーマン唐沢は、自分の正義を貫くため、ある行動に出る。時は移ろうも真実は
変わらない、シリーズ第9弾。(裏表紙引用)



はいはい、誰も読んでいない薬屋探偵シリーズ遂に第9弾。今回は姉貴ですらレビューが出ていないぞ。
高遠刑事が準主役のこのお話を読んでいないなんて一体どういう風の吹き回しであろう。。

と、言うわけで今回9作目にして初の高得点。
正直言わせてもらうと、キャラが何となく萌え萌え~というだけで、「面白い」と思って読んでいた
事は実はあまりなかった^^;ラノベの割に文章読みにくい人だし。
それが今回、やっと何か感じるもの、があった。大人の青春ストーリーと言ってもいい青臭い
メッセージがてんこもりなのだけど、それを体現してみせている物語は生き生きとするもんだ。
その上、今回はシリーズキャラ総出演というぐらいファンサービスに溢れているし、
ただの証言者である脇役ですらきちんと面白く描き分けがされている。

半分は”尊敬されない先輩”高遠刑事&”真面目でエリート気質”來多川が追う事件、
半分は”うだつのあがらないサラリーマン”と妖怪コンビの奮闘記。
薬屋のエピソードと言えば目につくのは”座木の大事な鳥籠壊しちゃった”事件くらい。
事件そのもののミステリ的面白さは薄弱かもしれないけれど、本書全体に仕掛けられていた罠には
感心した。ややこしさを予感して丁寧に読んでいなければ大変だった気もするけれど。

世代を越えて届く物語ではないかもしれないが、若いうちに読んで、大人になって思い出してみる
ような、切なさと爽やかさがいっぱいだ。