すべてが猫になる

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火刑都市  (ねこ3.5匹)

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島田荘司著。講談社文庫。


東京四谷の雑居ビルの放火事件で若い警備員が焼死する。不審な死に警察の捜査が始まった。若者の
日常生活に僅かに存在した女の影……。女の行方を追ううちに次は赤坂で放火が。そして現場に
”東京”と謎の文字!索漠たる都市の内奥と現代の人の心を見据えて鬼才が描く、印象深い
推理長編。(裏表紙引用)




コレを後廻しにして読んで、わかったこと。謎解きものとしては、『死者が飲む水』の方がやっぱり
面白かったかもしれない^^;読み物としてはこちらの方が入りやすかったけれど。
だけど、それは”時刻表トリックではなかったよばんざい”という意味でしかないのは正直な
ところ。普通に読めばいいのにね。どうも島田さんの社会派推理は著しく自分に合わないみたいです。
放火犯の犯行経路とか、犯行時刻などに興味を持てない。

”人間としての正しさと、女としての正しさは違う”というくだりには付いて行けない自分がいた。
一見、読者が首肯してしまう断定的な書き方なので面食らう。
これは犯罪に加担した者、あるいは首謀者の物語のはずなので、果たして倫理観を破壊してまで
格好のつく主張なのかどうか。。。深みを出そう出そうとする島田さんの”女性観”の自分との
不一致がこの作品でもまた出てしまった。自分がこういうモードに入ってしまうと、本来
感動的であるはずの中村刑事の”諭し”のシーンや葛藤すらもストレートに感じ入れない。


なんだか3連続で批判ばかりしているのでテンションが下がっています。
前置きするべきでしたが、この作品がミステリーとして平均以上の面白さがあることを
承知の上で、あくまで自分だけの印象を書かせてもらいました。