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お葬式  (ねこ3匹)

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瀬川ことび著。角川ホラー文庫


授業中に突然鳴り出したポケベルの電子音。あわてて見た液晶画面に表示されたメッセージは
『チチキトク』。病院で、豪華なカタログをかかえてやってきた葬儀社を丁重に追い返して母は
言った。「うちには先祖伝来の弔い方がございますーー」。(『お葬式』)
日常のなかの恐怖を、ユーモラスに描く、青春ホラー小説の誕生!(裏表紙引用)



積読本、ついに「さ行作家」突入。(まだ京極さん残ってるけど^^;)


第6回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作(表題作)ということで、一応楽しみにしていた
作家さん。悪いけど、ちょっとおいらには期待はずれ。
軽妙なタッチで描くホラーという特性は理解したものの、ユーモアと恐怖は本来相性が良いのだ。
上手い作家ならば、このシーンはもっと笑える。この台詞はもっと生きる。と思ってしまう
文章の稚拙さは自分には致命的だった。表題作などはネタに新鮮さがまるでないのだから、
その分独特の言い回しや意外性のあるオチなどを期待しても罪はないだろう。
解説が付いていなかったので、一体どの点を評価されて受賞されたのかはわからない。
語り口の軽さが文章力不足を現しているとは思っていませんのであしからず。


まあ、でも『ホテルエクセレントの怪談』のオチや、『十二月のゾンビ』の奇怪さは
面白かった。恐怖度での物足りなさは感じるものの、非現実さを笑いに変える手法は
ホラー向き。ただ、自分は乙一『夏と花火と私の死体』を読んで以来そんじょそこらの
ものでは驚かなくなった。乱暴に言えば、本書のように「本当に笑いにしてどうするんだ」
という印象を受けるものは合わないのかも。その点、ラストの『心地よくざわめくところ』は
もう少しで傑作になったのになあ。