すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

マーチ博士の四人の息子/Les Quatre Fils du Docteur March (ねこ3.7匹)

イメージ 1

ブリジット・オベール著。ハヤカワ文庫。


医者のマーチ博士の広壮な館に住み込むメイドのジニーは、ある日大変な日記を発見した。書き手は
生まれながらの殺人狂で、幼い頃から快楽のための殺人を繰り返してきたと告白していた。そして
自分はマーチ博士の4人の息子ーーークラーク、ジャック、マーク、スタークーーーの中の一人で
あり、殺人の衝動は強まるばかりであると。『悪童日記』のアゴタ・クリストフが絶賛したフランスの
新星オベールのトリッキーなデビュー作。(裏表紙引用)



あとがきで知った衝撃の事実。
女流作家だったのか。。。(著者近影ちゃんと見てたんだけど^^;だってオールバックだし^^;)

と、言うわけで昔から楽しみにしていたブリジット・オベールに初の挑戦です。
まずはあまりの読みやすさにビックリ。登場人物が少ないので翻訳ものに付き物の「名前を
覚えられない」が皆無。しかも、作風が殺人者の日記・ジニーの日記と交互に入れ替わるという
面白い体裁のため、冒頭からすぐにわくわくと入り込めます。初めはこそこそと覗き見していた
ジニー、堂々と悪びれもせず殺人を記述していた”4人の息子のうちの誰か”の関係が、
日を重ねるにつれ変化していくところも見もの。ジニーサイドと殺人者サイドの翻訳者が
別、というのも成功した要因なのかな。



ただ、あまり好みではなかったかも。。。。。。。(小声)


全編日記で埋められているので飽きが来たのと、4人の息子それぞれのキャラクターが
説明文のみで掘り下げられていないので「い、一体誰が!?」と興奮しにくかったのと、
「トリッキー」というには自分にはそれほどだったな、というのと。
謎解きものとして読むと唐突感が強く、伏線らしき描写が少しあからさますぎるわりに
肝心のメインの騙しの部分では「ああ~、気付かなかった!」というよりは
「いや、コレわかるわけがないから」に近く。。。

普通に楽しく読むには支障はありませんし、「面白い」と言ってもいい良い作品だとは
思います。それでも今思うと、「読む前が一番面白かった」のは残念です。