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伊集院大介の新冒険  (ねこ3.9匹)

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栗本薫著。講談社文庫。


平和で小綺麗だけが取り柄の新興住宅地から、平凡な主婦と娘が忽然と姿を消した。二つの死体を
残して。互いに無関心だった住民たちは、事件について情報交換をするうち、次第に親密さを増して
いく……。事件の核心を衝く、大学院生・伊集院大介!名探偵の若き素顔が窺える、人気シリーズ
七篇を収録。(裏表紙引用)



姉貴にいただいた本を積読してしまってすいません。いや、だって一気に読むと印象に残らないから
勿体ないじゃない。。。
と、いうわけで三冊目の伊集院大介シリーズ。

前作で「御手洗潔を彷彿とさせる」とかなんとかほざいていたわたくしですが、本書ではまったく
御手洗の「み」も感じさせない印象でした。この探偵、凄い普通だ。普通と言っても一般人とは
一線を画す頭脳明晰冷静沈着さでストイックな名探偵ならではの格好良さはあるのだけど。
他の名探偵ものと違うなあ、と感じたのは、事件が起きてから、「腰を上げるまでがじれったくない」
構成であること。こんな事件は俺の領域じゃない、と斜に構えず、目線が常に一般市民と共にあり、
彼の人柄でそれを物語にしてしまうのがいい。殺人事件を扱っていながら、いわゆる”日常の謎
系で登場する探偵たちと立ち位置が近い気がする。
そうなると、どうして自分がこのシリーズに目を向ける機会がなかったのかと疑問が生じる。
普段文句ばっかり言いながら読んでいる新本格のお歴々よりも、自分にはこういうタイプの
ちょっとした偏屈屋が好むようなミステリーの方が断然合っているんじゃないかとすら思う。
たとえば太田忠司さんとかを読んだ時、もの凄く自分にしっくり来ている気がするもの。
これもそんな感じ。

あと二冊、楽しみだなあ。次のは長編っぽいぞ。