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第20位 『アイデンティティー』 著/スティーヴン・ピジック

巷でムーブメントとなっているらしいゆきあやオールタイムベスト、遂に(やっと)20位~に
突入しました。さて、過去ベストを振り返ってみるに、やはり人気が集まるのは「現在入手しやすく、
ミステリファン一般に知られた作家」のようです。皆さんは優しく「さすがゆきあやさんには広める
力あり」と仰って下さってますが、元々そういった広まる要素がその作品にあるだけで、ゆきあやは
それを後押ししているだけだと思います。本当に隠れた名作や、「誰やねん」的作品を手に取って
いただけてこそ、真のカリスマ。(酔ってんのか)


さて、今から盛り上がりそうな企画を盛り下げるかもしれない作品が20位に登場しました。
反則かもしれませんが、本書は2003年アメリカで大ヒットとなった映画の「ノベライズ」で
ございます。(「ソニー・マガジンズ」のヴィレッジ・ブックス出版で文庫出てます)
ジャンルで分けると「サイコキラー」もの、でしょう。あ、ちょっと待って下さい、
逃げないで下さいそこのホラー嫌いの貴方。本作は、サイコでありつつ、根底はしっかりとした
定番のミステリーなのでございます。
何と言っても、基本は「そして誰もいなくなった」のバリエーションですからね。


豪雨のため孤島と化したモーテル。そこに偶然集まったのは、車に轢かれて重体となった妻と
その夫、6歳の息子。落ち目の女優。娼婦。若い青年とその恋人。護送中の殺人犯と刑事。
不穏な雰囲気の中、いきなり第一番目の殺人が起こる!そして次々と殺人が起き、死体が
消失してしまう。一体、誰が、何の目的で?



え~と、みなさん、最初は映画を観てもらいましょう^^;あとがきにも「絶対先に映画を」と
書かれております。ほぼ映画に忠実な作品ですが、映画では描かれなかった細かい人物描写や
背景が盛り込まれているので、面白さを再確認出来ます。おいらは結構ノベライズを読むのが
好きなほうで、たくさん読んで来ましたが、初めてこれで「所詮はノベライズ」という固定観念
洗い流されました。
何かが間違いなく起こる不気味な雰囲気。登場人物達のクセの強さ。彼らの背後に潜む
ギリギリの恐怖。そして中盤から、彼らはお互いのミッシング・リンクを探り合う。
そこから場面転換する、全く新しい未知の展開。。
この使い古された設定、展開で何をそんなに盛り上がる事があるのかと言うと、それはもう
わたくしの口からはもったいなくてとても言えません。
はっきり言えるのは、今までのどんなクローズド・サークルの消失ものでも思いつかなかったで
あろう、斬新で衝撃的なネタ(あえてネタと言おう)であるからです。
これをつまらない、と思う人ならミステリが好きじゃないんだろう、と言えるほどです。
犯人は誰?とか。探偵役がどうとか。トリックを見抜こうとか。そういう自分の中にある、
経験と知能で満杯の心をどうかこの作品では解き放ってみて下さい。



わたくしめはこの作品が大好きなので(映画館と家とで4回観た^^;)、どなたか
観てるといいな。今までたくさんベスト発表して熱く語って来たけれど、一番薦めたいのは
この作品なんです。あまり暴走したら光彦さんみたいな事になりかねないけれど、
この企画ではゆきあやはどんどん前に出るよ。