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空飛ぶ馬  (ねこ3.8匹)

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北村薫著。創元推理文庫



落語ファンで女子大生の「私」と、探偵役である噺家春桜亭円紫師匠との名コンビが織り成す
人間模様と日常を取り巻く謎。「円紫さんと私」シリーズ第1弾、5編収録の短編集。




北村様の作品ってどれも文章しか褒められない。
あ、いやいやいや、そこしか褒めるところがないという意味でなくて、登場人物の魅力や
謎の氷解の面白さは読んでいる間は楽しめるのだけれど、結局何が心に残るか、斜線を引くと
したらどこか、となるとやはり素晴らしい比喩表現や自然の描写により人の心情を見事映し出す、
そういう箇所に他ならないわけです。

今回メモをとれなくて引用出来ませんが、本書では「私」の読書に対する思いを描いたくだりが
非常に心に残りました。「一日一冊読むぜ!」とか「古本屋でこれだけ購入して来たぜ!」とか
そういう熱意の表現ではなくて^^;、今日も一日本を読む事が出来た事に対する感謝だとか、
しっとりと感動的ではないですか。それでいて、「これは上下巻だから1冊としてカウント」とか
厚い本ばかり続いたからつい薄い本ばかり手に取ってしまうとか、「君もかい」と
ほころんでしまうような本への接し方に非常に好感を持ちました。
実際は、落語にさっぱり付いて行けないので楽しみが恐らく半減してしまった気がするのと、
「すいません、もう自分を文系だなんて言いません」と言いたくなるような文学知識に
消え入りたくなったりもしましたが^^;だってこの本に出て来た「有名な」作品たち、
どれも読んだ事ないんだもん。。
本を100%楽しむのって本当は簡単だけど、自分が勝手に遮断してしまっているのは寂しい。
それでもおいらは明日も本を読みます。
泣いても笑っても本が読めるから毎朝辛くても起きるのです。うし。