すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

ホテルジューシー  (ねこ3.9匹)

イメージ 1

坂木司著。角川書店


大家族の長女に生まれた柿生浩美=ヒロちゃんは、直情で有能な働きモノ。だがこの夏のバイト先、
ホテルジューシーはいつもと相当勝手が違う。昼夜二重人格の”オーナー代理”はじめあやしげな
同僚達や、ワケありのお客さんたちに翻弄される日々。怒りつつもけなげに奮闘するヒロちゃんに
さらなる災難が……(裏表紙引用)




※なんかゆきあやによるプライベートのうざい愚痴が紛れ込んでいるので、読み飛ばして下さい。。。


歯医者さんのバイトでがんばるサキちゃんのお話『シンデレラ・ティース』の続編、というか
姉妹編。サキちゃんの親友・ヒロちゃんはサキちゃんと正反対のしっかり者。サキちゃんが
お嬢さん育ちの世間知らずなのに対して、ヒロちゃんは”男前”というニックネームが似合う程の
正義感溢れる少女だ。リンクがあるのでどちらが先でもいいが両方読まれる事をお薦めしたい。

さて、『シンデレラ~』は自分的には坂木さん作品の中では肌に合わないところもあった
珍しい作品だった。理由は記事で述べたので割愛するが、今回まるで雰囲気が違うとはいいながら
多少は同じ印象を主人公に感じなかったでもない。好きなのは圧倒的にヒロちゃんの方なのだが。
そして、現在の自分が読むにはタイミングが悪かったのはイタい。
現実逃避のための読書でもあるのに、このヒロちゃんが遭遇するお話のひとつひとつを
読むたびになんだか仕事をしている気分になってしまったのだった。。。。。
そうだよヒロちゃん。どんなに頑張っても理解出来ない人間なんて社会にはいっぱいいるのだよ。。
車を家族に乗られてしまったので出勤できませんとか、店長が怖くて遅刻の連絡が出来ませんでした
とか、そんなおそろしい人間だっているのさ。。。(ふぅ。。)
『トモダチ・プライス』を読んだ時においらはとてもヒロちゃんのようには出来ないなって
思った。毎日来る常連さんが顔をアザだらけにしてやって来た時も、おいらは気付かないふりして
いつものように接客してしまった事もあるよ(事情を知ってたので)。。。
最近の自分は忙しさにかこつけて、友人の遊びの誘いを100%断り続けているほど。
こんなに色々な事から逃げて、仕事だけこなして、夜は自分の世界に浸って。

だって身内でも親友でもない他人を理解なんて出来ないんだよぅ~~~~~~~~~
まぶしいぞヒロちゃん。



む。

えと、連作短編集なんですが、面白さは一定しているので満足といえば満足。
キャラクターは相変わらず立っているので、そのおかげかも。オーナー代理が夜と昼で
顔が変わるのが面白かった^^;夜はかっこいいんだこれが^^
そういえば、本当のオーナー出なかったな。。。
双子のクメばあ・センばあがお気に入り。もっと出して欲しかったな。ぶっとんでるけど、
なんだか可愛いのです。
「トモダチ~」以外で唯一「ン~~~?」と思ったのが2編目の『越境者』。ヒロちゃんの
大嫌いな人種、「ギャル」が二人登場するお話です。坂木さんの作風的に、どういう風に
持って行って感動させるお話なのかを想像してしまったので、のめりこめなかった。
自分は、「見た目がワルで、実はいいやつでした」的な展開は好きではないので。。
例えば、「金髪の凄いヤンキー少年がおばあさんに席を譲っていて感心した」的な。
そういう発言をすると同時に、「私は人を見た目で判断する人間です」と告白しているのと
同じなので抵抗があるんです。
(どう書いてもネタバレになるので真相については触れませんが、内容は良かったと思う)


後は完璧、と言っても良いのでは。
坂木さんの作品は、短編で登場したキャラクターを上手に、本当にいいところで繋げてくれる。
主人公と同じ時間を生きて、主人公と同じ速度で成長し去って行く対人関係。
理想で十分、等身大半分。キャラの年齢なんて坂木さんを読む自分には関係ないぞ。