すべてが猫になる

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ヘビイチゴ・サナトリウム  (ねこ3.7匹)

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ほしおさなえ著。東京創元社ミステリ・フロンティア


中高一貫教育の女子校の屋上から、高3の生徒が墜死した。様々な噂が飛び交うなか、男性国語教師も
屋上から墜死する。二人の死の真相は?小説家志望の彼は、死んだ女生徒と協力しあって書き上げた
作品の新人賞受賞を死の直前に辞退していた。ある雑誌で作品中の文章と同じ文章を発見したからだ。
なぜ、そんなことになったのか?その文章の真の作者は誰なのか?女生徒の登場する原稿、しない
原稿、P・オースターの小説『鍵のかかった部屋』……錯綜するテキストと教師の自殺した妻が
残したネット・サイト「ヘビイチゴサナトリウム」に隠された秘密とは?そして浮かび上がる
密室殺人。(あらすじ引用)



女子校出身のわたくし。こういう設定のものは違和感なく読めるタイプ。
しかし、あまりの文章の読みにくさに閉口しました。。文体自体は軽めで会話も多く、
作家さんが詩人の方という事でそれらしい綺麗なものです。が。
思春期独特の繊細で揺れ動く感情、文学少女的な雰囲気を表現するこの感覚がどうも始終
鼻についてしまいました。自分ではない誰かに憧れる感情や生きる意味を問いつめる感覚は
理解出来たのですが。
登場人物の名前がまず覚えにくかったのも入り込みにくかった一因。美術部の生徒をメインに
据えているので、呼びかけが名字に「○○先輩」「○○先輩」となっているのがどうも。。
いや、他人は知りませんが、普通嫌っている先輩の噂をする場合、本人がいないところでは
隠れたあだ名や呼び捨てになったりしませんか。。。?え、しない?すいません。
しかも、語り手がコロコロ変わる上に、変わった事に気付きにくいのはおいらが悪いの?
基本が神の視点なので、いちいち誰の思考なのかわかりづらかったのよ。。


しかーし。
これがまた、すいすいと物語に引き込まれて行く自分もいたり。。
どうも作品自体に雲がかかっているというか、鬱っぽい雰囲気。壊れた人間も出て来るし、
楽天的でない性格の子ばかりで固められているので、作品テーマには合っているようで。
後半は本格ミステリの形をとっているし、しっかりとどんでん返しもある。
ラストのすっきりしない感ひとつとっても、詩人らしいのかもしれない。


最近読んでいるミステリ・フロンティア作品が立て続けに「優等生」的な文章が多かったので、
自分に限れば粗があろうとこういう変わり種の方が好みです。