すべてが猫になる

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クラインの壺  (ねこ4.8匹)

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岡嶋二人著。講談社文庫。


200万円でゲームブックの原作を、謎の企業イプシロン・プロジェクトに売却した上杉彰彦。その
原作をもとにしたヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の制作に関わることに。
美少女・梨紗と、ゲーマーとして仮想現実の世界に入り込む。不世出のミステリー作家・岡嶋二人
最終作かつ超名作。(裏表紙引用)



らりほっほ~~~~v(^^)v ←また……

よもさんのオールタイムベスト・堂々の18位作品と言うから急いで取りかかりましたよ!!
(持ってた、というのもある^^;)岡嶋さんと言えば、個人的に当たり外れが大きいためか
まだ半分くらいしか読んでいません。評判のいい『99%の誘拐』がいまひとつラストが
気に入らなかったから「名作」と言われても腰が引けていた、というのもあるかも。


わたくしは昔からゲームブックを読んで育ったと言っていい程ゲームブックが好きだったので、
こういう「ゲームの原作」から発展するお話は大好きです。貴志さんの「クリムゾンの迷宮」も
良すぎたし、はなっからこういう設定のものに魅力を感じてしまうのでしょう。
とは言っても、文字で読むそれが好きなだけで、ロールプレイングゲームや推理ゲームは
一切やらないし、苦手なんですけどね。

あとがきにも記されていたように、これが書かれた年代を考えると(パソコン、という言葉すら
一般的ではなかった頃らしい)悪魔的な才能を感じますね。しかも、決して専門的にならず
素人にも非常に仕組みがわかりやすい。最初の数ページで設定をある程度理解し、
物語に入り込ませる、、というのは無駄がないと共に相当書く側の頭が良くないと出来ない芸当では
ないでしょうか。わかりやすい説明が出来るというのは、書く本人が完全にそれを理解していると
言う事でしょう。もちろん、この「クラインの壺」というゲーム(仮想世界で様々な感触を
知覚出来る、というものです)も魅力的です。自分が体験している気分にすらなります。


実は、この物語が始まってすぐに、こういう仕掛けなんじゃないか、、というのは
想像してました。ここまで詳細な思いつきではなかったですけど、こういう風に持って行く
お話なんだろうな、という恐怖感、ワクワク感でいっぱいになりました。
それでも「え、これもそうなの?」という驚きはあったのですが。

そして、衝撃というか思わず内心で拍手をしてしまったのは、ラストの引き方です。
主人公の気持ちが凄くわかるし、単純に「わー、やられたー」というだけで終わらない
皮肉なエンディングが大いに気に入りました。実は、ちょっとだけ、その手前で
「調子のいい男だな。。」と思ってしまっていたので、それを覆してくれて大満足です。


5匹でもいいぐらいなんだけど、「首無」に5匹つけちゃったからこれぐらいで。
でも気持ちは満点ですのよ。>よもさん(ありがとうありがとう)