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ハッピーエンドにさよならを  (ねこ3.8匹)

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歌野晶午著。角川書店


「このミス1位」「本ミス1位」日本推理作家協会賞本格ミステリ大賞の四冠を達成した
歌野さんのノンシリーズ短編集。ショートショート含む11編収録のアンチ・ハッピーエンド・
ストーリー。



いやあ、歌野さん久しぶりだねえ。
ていうか、ミステリ仲間の皆様方、この本の書評待ってたんだけど……読まないんですか?
歌野さんですよ。歌野さんの新刊ですよ。
なんか「葉桜」で凄い大物作家になっちゃった割に予約2人だったし……。
それはさておき、感想。


どれもこれもあっと言う間に読める。
さくさくと読める、引き込ませる文章はさすがと言いたいけれど、企画が企画だけに
読後どころか出だしからイヤ~~~~な気分になるものばかり。ある意味さすがだ。
押しつけの善意(「尊厳、死」)や誤解から生じる破滅(「おねえちゃん」)、
親の行き過ぎた教育(「防疫」)、中にはミステリ的な歌野さんらしい仕掛けを
施したものもあるが、出て来るのは愚かな人間、その犠牲者である子供達、現代が生み出した悪魔。
気持ちが沈んでいる時には絶対読みたくないもののオンパレード。
(みなさん「玉川上死」は読まれてるはず)

だからこそ歌野さんの試みは成功していると言っていいかもしれない。
どうしてこんなものを書くんだ、という反発よりも、テーマを一貫してこれだけバラエティに
富んだお話を揃えられる、しかもどのお話も標準より面白いというのは力のある作家にしか
出来ないんじゃないか。歌野さんに何を期待して読むか、という点によって
印象は違うかもしれないし、ファン全てに歓迎される内容でもない事は想像出来る。

面白かったよと言ってあげたい。
もう一度読みたいとは思わないけど。