すべてが猫になる

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ダリの繭  (ねこ3匹)

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有栖川有栖著。角川文庫。


幻想を愛し、奇行で知られたシュールレアリスムの巨人ーーサルバドール・ダリ。宝飾デザインも
手掛けたこの天才の心酔者で知られる宝石チェーン社長が神戸の別邸で殺された。現代の繭とも
言うべきフロートカプセルの中で発見されたその死体は、彼のトレードマークであったダリ髭がない。
そして他にも多くの不可解な点が……!?事件解決に立ち上がった推理作家・有栖川有栖
犯罪社会学者・火村英生が難解なメッセージに挑む!(裏表紙引用)



さて。ミステリブロガー近辺では「待望の江神シリーズ、新刊!」に大いに沸き上がっている昨今。
あちらこちらで記事をアップされていたり、サイン本待ちであったり、予約待ちであったり、
買って来たよ今から読むよと密やかなブームとなっている模様。
江神シリーズに何の思い入れもない罰当たりなゆきあやがそんな騒ぎを横目に、少し疎外感を
感じつつ、今更こんなものを読んでおります。そういえば「乱なんとかの島」ですら
読んでおりません。
とか言いつつ、これもちょっと前に読んだもので記憶があやういのですがお許しを。


事件の謎解きそのものよりも、作品のモチーフである「繭」というテーマに印象が残った。
「スイス時計の謎」でちらっと触れられていたアリスの昔の悲恋にももう少し突っ込んだ内容が
描かれているし、アリスの「小説を描く」という気持ちにも強い芯というかポリシーのようなものが
見受けられる。火村さんは相変わらず謎を残す。どうでもいいが、作中の火村さんとおいらは
同い年であったことに少なからずショックを受けたぞな。。
他人の考え方を「理解できる」「理解、理解」と意識的に連発する火村&アリスの会話にも
思うところが残った。自分で言えば、自分と全く対照的な意見の感想文などもこれにあたるのでは
と思う。同意できなくても相手の主張や性格、考え方を理解し、尊重する精神というのは
持ち続けていたいものだ。


ミステリとしてはなかなか良い作品だと思う。どうしても自分は角川文庫のものは
国名シリーズとの雰囲気の齟齬を感じて入り込めないのだけど。刑事が強引であったり
アリバイ崩しがメインであったり。それでも自慢のダリ髭がなぜ剃られていたのか?という
謎や、被害者の下着だけを残してなぜ衣服を持ち去ったのか、という疑問には
納得のいく「加害者、関係者の心理」が生かされていて大変スムーズで気持ちの良い
推理だった。(なんかオークションの評価みたいだけど^^;)



それにしても凄いな、この表紙。。。。
買ってから一年くらい経っているのだけど、引っ張り出して来てびっくりしたぞよ。。