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青年のための読書クラブ  (ねこ3.6匹)

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桜庭一樹著。新潮社。


東京・山の手の伝統あるお嬢様学校、聖マリアナ学園。校内の異端者だけが集う「読書クラブ」には、
長きにわたって語り継がれる秘密の<クラブ誌>があった。そこには学園史上抹消された数々の
珍事件が、名もない女生徒たちによって脈々と記録され続けていたーー。(あらすじ引用)



こりゃまた一風変わった題材を持って来ましたな。タイトルからしてどういうお話なのかイメージ
しにくいのだけど、まさか「青年」が学園の女生徒を指したものだったとわ^^;;
女子校=「お姉様~」という図式が安易だとは思わないのはその対象を「偽王子の創造」という
また一歩進んだ設定を斬新に感じたからなのだけど。
その設定をフルに生かした、烏丸紅子というカリスマの登場する第一章だけが飛び抜けて
面白かった。これを残念と言っていいのか、良かったと言っていいのか。
あまりにも第二章以降、面白さに落差がありすぎた。
桜の園」の100年史から変わったものを時系列にピックアップして行く構成は面白いし、
語り手が青年となった女生徒というのも普通では出来ない試みだった。特にペンネーム?が
面白い。異端児とは言え、お嬢様の発想とは思えない。それだけにそれぞれの語り手に描き分けが
乏しかったのは惜しい。

桜庭さんは、語り手を統一した作品の方がまとまりがあるように感じるのは私だけか。
赤朽葉家の伝説』で感じた作品世界の統合性の物足りなさを、今度はこの作品で感じてしまった。
本書を通じて読者に、世界に提起する「世界は本当に空っぽか?」というテーマが
私の中では宙に浮いたままだ。


好き嫌いで言えば好きな雰囲気だし、桜庭一樹という作家に過剰な期待をしすぎているためかも
しれなかった。伊坂幸太郎と同じ、作品によるんだな。