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眼球綺譚 (ねこ3.5匹)

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綾辻行人著。角川文庫。

人里離れた山中の別荘で、私は最愛の妻・由伊とふたりで過ごしていた。妖精のように可憐で、愛らしかった由伊。しかし今はもう、私が話しかけても由伊は返事をしない。物云わぬ妻の身体を前にして、私はひたすらに待ちつづけている。由伊の祝福された身体に起こる奇跡―由伊の「再生」を(「再生」)。繊細で美しい七つの物語。怪奇と幻想をこよなく愛する著者が一編一編、魂をこめて綴った珠玉の作品集。(裏表紙引用)
 
20.3.16再読書き直し。
 
綾辻さんの幻想ホラー小説集。7篇収録。
 
「再生」
16歳差の夫婦。妻は身体が切断されてもまた生えてくる性質を持っているという。首を切断された妻は果たして再生するのか――。ミステリー的なテクニックもあり、綾辻さんらしいホラー。傑作の部類だと思う。
 
呼子池の怪魚」
池で釣りをしていた男が釣り上げた奇妙な魚。やがて家で飼うことになったが、日に日にその魚が姿を変えていき…。魚の変化と妻の心の病がリンクしているのがうまい。生まれてきたものは想像と違って爽やか(歪んではいるものの)。
 
「特別料理」
あまり感想を言いたくないというか思い出したくない内容。ゲテモノ、イカモノ喰いの夫婦が通い始めた特別料理店。そこで常連にだけ出されるスペシャルメニューとは。これ想像のレベルの上を行くキモさだった。オチの料理よりも、結構早い段階でのG喰いにかなりメンタルやられてしまったが。。
 
「バースデー・プレゼント」
サークルのクリスマスパーティーで、全員からバースデープレゼントを贈られた女子大生。その中身はおぞましいものだった。。記憶の混乱というものだろうか。それとも夢?
 
「鉄橋」
大学生カップル2組が夜行列車で怪談を語り合う。ありきたりな怪談で怖くはないが、話に色がついているのでスラスラとは読める。
 
「人魚」
これは綾辻さんがモデル。犬が拾ってきたのっぺらぼうの人形に、主人公がとりつかれていたというお話、かな。生まれ変わりの物語かも。
 
「眼球綺譚」
出版社に勤める手塚のところへ舞い込んだ、大学時代の後輩からの手紙。そこには「眼球綺譚」という小説が入っていたが――。中篇かな。長いわりにあまり怖くはない。「特別料理」でやられちゃってるから。ミステリ的な整合性もないので幻想小説かな。
 
以上。
「再生」と「特別料理」が圧倒的だった。「呼子池~」が次点かな。あとはあまり話を咀嚼できなかったかも。なので平均して3.5。しかし挙げた2篇だけでも読む価値はあると思う。ホラーとミステリーの融合、オチの絶妙さ、綾辻さんの本領発揮というところ。