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少女には向かない職業  (ねこ4匹)

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桜庭一樹著。東京創元社ミステリ・フロンティア


大西葵は中学二年生、十三歳。
親、友人、大人。他者とコミュニケーションを取る事に神経を常に張りつめ、遂には一年間に
二人の人を殺してしまう。同じように力を失くしたクラスメイトの静香と共に。
それは闘いだった。



非常に不快にインパクトのある一冊。
いきなり悪口かよ、と思わないでね。
この自分にまだ衝撃という器が残っていた事に動揺している。それぐらい強烈な作風だった。
さくさくと読みやすい文体とは裏腹に、冒頭からいきなり少女の殺人の告白で始まる本書は
最初から最後まで「満たされない、愛されない二人の少女が絶望を抱え、破滅に向かってゆくまで」を
描いた他では類をみない哀れで凄惨な内容だった。
ほとんど読んでいる間の自分には不快さしか感じられず、「どういう世界観だ、何のつもりだ」と
作者に対する反感すら覚えていた。
挫折書庫行きまでを考えていたが、確かに文章は流れるようで時には今風に詩的ですらある。
文学的な虚飾と光るセンスを伺える会話。好きなものと嫌いなものが同居してしまったような
カレーに林檎を入れられてしまったような。


哀れであればあるほど、悲惨であればあるほど、面白くなる。読む手が止まらなくなる。
それが嫌だ。
無力な子供の末路を描くならば、面白いものに仕上げるならば、こちらが望むような結末は
期待してもつまらない。適切な判断や責任ある決断。
昨今の刺した刺されたの悲惨な事件を毎日ニュースで目の当たりにすると、本当は大人だって
無力じゃないのかと思う。
この物語の結末だって、もっと救われないのが現実かもしれない。

もやもや。林檎だけ残してごちそうさま。



本書を読んで、もっと桜庭一樹の世界を知りたくなった。
色々これから積極的に読んでみようと思う。なんだかんだ言ってこの吸引力は無視出来ない。