すべてが猫になる

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子どもたちは夜と遊ぶ  (ねこ3.7匹)

辻村深月著。講談社ノベルス


優しく触れようとしても壊してしまう、大人になりきれない子どもたちは、暗い恋の闇路へと
迷い込んでしまった……。同じ大学に通う仲間、浅葱と孤塚、月子と恭司。彼らを取り巻く
一方通行の片想いの歯車は、思わぬ連続殺人事件と絡まり、悲しくも残酷な方向へと狂い始める。
掛け違えた恋のボタンと、絶望の淵に蹲る殺人鬼の影には、どんな結末が待っているのか!?
(裏表紙引用)




まいどおなじみ辻村さんのノベルス上下巻。先週更新していない間、実はずっっっとこれを
読んでいた。明日返却期限。セーフ。辻村さんの作品はそれなりにずしっと重たい内容なので
一気読みなんぞした日にゃ体重が減ってしまう。本作はかなりヘビーだという噂を聞いていたので
覚悟をしていたが。。。相変わらず、キッついなあ。。
双子の母親の、片方の男児だけに向けられた信じられないような虐待。
主人公の月子を取り巻く友人達が次々と残酷に殺されていくこの展開。。
肉体的にも、精神的にも、これは読む者に苛酷すぎる。

それだけの内容ならいくらでもほいほいと挫折して次の平山氏を……おっと、それは余計やばい。
何が惹き付けられるかって言うと、華美でマイペース、純粋だけどでも実は神経質な女子大生、
月子の引力だろう。同じ作者の手で生み出されたものだからそりゃそうなんだけど、
『凍りのくじら』で登場した理帆子とは通じるものがある。月子の方が容姿の割に個性は控えめ
だけれど、内面と外面のギャップはこちらの方が迫力がある。女子の友情と嫉妬、張り合い、
見栄。これを描かせたら右に出る者はいない辻村さん。自分はここまで自分がコンプレックスを
喚起される友人はいないし、「友人」の定義も月子とは大きく違うのだから本来「嫌いなタイプ」
であるべきなのだけれど。

わかるんだよ、凄く。何の欠点もない完璧な人間はいないだろうし、ちょっとカチンと来るような
発言をし合った事のない友人は皆無だ。「こいつだけはほんとに……」と思って縁を切ろうと
思っても、何ヶ月か経つと会いたくてたまらなくなる。そしてまたカチンと来る^^;
女同士の微妙なバランス、そこまでは男性作家でも上手に描ける作家さんはいるが、
「その友情を保つ秘訣」までを描けるのは女性作家だけだろう。


本筋とは離れた感想になった。
メインの連続殺人鬼の筋については、最近不感症になっているのか単に長かったからか
「うん、知ってたし」ぐらいの感触。その手前にあった方のサプライズにはびっくりしたけど。
びっくりしたのはその意外な事実の方じゃなくて、伏線の張り方。
これも辻村さんの作品ではお得意だよね。