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殺人鬼 ――覚醒篇 (ねこ4.2匹)

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綾辻行人著。角川文庫。

伝説の傑作『殺人鬼』、降臨!!’90年代のある夏。双葉山に集った“TCメンバーズ”の一行は、突如出現したそれの手によって次々と惨殺されてゆく。血しぶきが夜を濡らし、引き裂かれた肉の華が咲き乱れる…いつ果てるとも知れぬ地獄の饗宴。だが、この恐怖に幻惑されてはいけない。作家の仕掛けた空前絶後の罠が、惨劇の裏側で読者を待ち受けているのだ。―グルーヴ感に満ちた文体で描かれる最恐・最驚のホラー&ミステリ。(裏表紙引用)
 
20.2.23再読書き直し。
 
綾辻さんの伝説のスプラッタホラー。犯人の名前や眼球を喰うところだけは覚えていたのだが…肝心の大仕掛けをすっかり忘れてしまっていた。今の時代なら珍しくもないかもしれないが、当時はあまりのグロさに気分が悪くなったものだ。ホラーの定石通りに「チャラい順」に殺されていく「TCメンバーズ」の面々。とにかく一人一人グロ描写を緻密に描き込んでいて、さらに犠牲者はすぐには死ねず、痛み苦しみの感情もじっくりと味わわされる。とにかく作者の仕掛けってなんだっけ?とそれだけを考えながら楽しんでいたが…。ここまで大掛かりだったとは。本格ミステリーではないが、もったいないほどのアイデア。ヒントは随所にあった。むしろよくぞバレなかったなというぐらい、「TCメンバーズ」の正体さえ分かれば全て氷解する。しかしこの正体隠しが実に巧妙なのだ。あまりのグロ描写に、読者に考える隙さえ与えなかったのかもしれないな。