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霧越邸殺人事件 ( ねこ3.9匹)

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綾辻行人著。角川文庫。

1986年、晩秋。劇団「暗色天幕」の一行は、信州の山中に建つ謎の洋館「霧越邸」を訪れる。冷たい家人たちの対応。邸内で発生する不可思議な現象の数々。見え隠れする何者かの怪しい影。吹雪で孤立した壮麗なる“美の館”で舞台に今、恐ろしくも美しき連続殺人劇の幕が上がる!日本ミステリ史上に無類の光芒を放ちつづける記念碑的傑作、著者入魂の“完全改訂版”!!(上巻裏表紙引用)
 
20.3.11再読書き直し。
 
初読は新潮文庫。当時、「本名と芸名の両方を覚えなきゃいけなくて大変だった」みたいなことを書いていた自分。正直、再読するとそこは何の苦労もしなかった。。それほど本名を頭に入れながら読む必要性もなかった。(関係なくはないが)読みづらさのようなものは改訂版でも残っていたが、芸術品の薀蓄が多少しんどいのと、館シリーズなどほど文章が柔らかくもないのでそのせいかと。ミステリ的な評価については初読時と大きくは違わなかった。綾辻先生が本格において大事にしている「雰囲気」というものは満点だったとは思う。吹雪の山荘ばりの閉鎖された環境、謎の6番目の住人、愛想の悪い主人や使用人たち。過去の火事や劇団員の過去の犯罪など、「暗黒館~」並に本格好きにとってのご馳走が並べられている。面白いのだが、謎解きの部分でかなり期待と外れてしまった。
 
以下、ネタバレ。
 
 
 
 
 
 
 
アンフェアだというつもりもないし、スーパーナチュラルな要素は犯人が「そう思い込んでしまう精神状態」だったから、という点も重々理解した上で。登場人物の名前に関連する品々やお盆が割れるなどの現象が「幻想」寄りだったことにガッカリを禁じえない。これはもう好みとしか言い様がない。犯人の狂った思考についても同様で、2番目の犯人については精神的うんぬんの問題だったことがどうしても割り切れない。複数犯人であったことも。ロジックとしておかしい点はないが、もっと膝を打つような推理であって欲しかった。探偵役が入れ替わるならば、その点をもう少しサプライズ的にしてもらえていれば…。