すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

奇跡の人  (ねこ2.9匹)

イメージ 1

真保裕一著。新潮文庫


31歳の相馬克己は、交通事故で一度は脳死判定をされかかりながら命をとりとめ、他の入院患者から
「奇跡の人」と呼ばれている。しかし彼は事故以前の記憶を全く失っていた。8年間のリハビリ生活を
終えて退院し、亡き母の残した家にひとり帰った克己は、消えた過去を探す旅へと出る。そこで
待ち受けていたのは残酷な事実だったのだが・・・。静かな感動を生む「自分探し」ミステリー。
(裏表紙引用)



これも同僚が買って来た本。「105円やってん!(*^^)v」と嬉しそうだった^^;
彼女が先に読み終わり、「面白い~面白い~」と連発。まだ『模倣犯』を読んでいたおいらが
模倣犯とどっちがおもろい?」と不毛な質問をすると、なんと奴は「ウ~ン・・」と考え込んで
しまったではないか。「ええっ!?模倣犯ぐらい面白いの!?」と相当な期待を持って
読み始めたわけだが。。。


ウ~ン・・・(ーー;)
彼女にはすまねえが、おいらはコレをいい作品だとは思えなかったよ。。
原因の一つに、「模倣犯」の前に読んでいた東野さんの「変身」と、凄く内容が酷似しているように
感じたというのがある。厳密に言うと全然違うのだが、脳手術をしてそして奇跡の生還を果たした
青年が自分に関する秘密をかぎつけ、、という梗概が全く一緒なんだもの。。
比べても仕方ないんだけど、東野さんと宮部さんの後じゃちょっと格の差が大き過ぎて
おいらとしちゃ不満たらたら。

ここには両氏の作品にあったような「考えさせられる要素」がない。
ミステリーとして謎を解く事を楽しむのもアリだが、それすらも「やっぱりな」の域を出ない
刺激性だけに力を入れたものだった。予想のつく事柄だけをこれだけ引っ張られると辛い。
そして、主人公の青年の人格形成に少し問題を感じる。
他の書評には「奇跡の人、じゃなくて勝手な人、だ」だの、「後半はまるでストーカー物語」だの、
概ね自分と同じ印象を他の読者も感じている事がわかる批判的な感想が目に付いた。
私が彼につけた名前は「恩を仇で返す人間」。

仕事を私情で何日も休み、金銭的に長期の旅が苦しくなると安易に友人に借りに行き、
他人の気持ちをまるで斟酌しない度重なる電話攻撃や待ち伏せ行為。
彼の気持ちが全くわからないとは言わないよ。でもね、人を思いやる事を知らない人間には
どんな奇跡も本当は起こっちゃいけないんだってラストシーンで思わせてくれた。
だから当然、彼の元恋人の気持ちも行動も私にはわからない。



すいませぬ。読む人によっては楽しめる作品かもしれませんが、どうしても自分は
この作品に褒めたい所がありませんでした。。
凄く悪い作品というのではなく、何とも言いようがない普通の作品ということで。