すべてが猫になる

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流星ワゴン  (ねこ4.9匹)

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重松清著。講談社文庫。


38歳でリストラされた「カズ」こと僕。息子は私立中学受験に失敗し家庭内暴力を振るうように
なり、妻の美代子との関係も修復が不可能なほどに崩壊していた。何が間違っていたのか、
どこで失敗したのか。人生をやり直したい、いっそ死んでしまいたい。そんな僕の目の前に、
5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンが現れたーー。





職場での事。本の好きな同僚との会話。お互いに『模倣犯』を読みながら。
「これ終わったら何読む?」「えー、最近なんか読みたい本ある?」「こないだ本屋で見て
気になってる人おるねん」「だれだれ」「えーと、しげ、、、しげ、、、しげなんとか。。」
重松清?」「それ!!」「『流星ワゴン』ておもろいらしいけど」「それ知ってる!」
「買って来るわー」(どんな関係だ)


という訳で早速いそいそと購入。すげえ!三列の平積み!!^^;
本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作、というのは買って初めて知ったのだけれど^^;、
とりあえずネタに、、と思ってねぇ。こういうあからさまな「泣かせ」本は絶対ゆきあやは
ハズすのですが、まあ恋愛ものじゃないし、読みやすそうだし、重松さんはおいらも気になってたし。
え、本題に入れ?はいはい、ではいつものように。



簡単に纏めると、衝突し合ってばかりの父と子の二代にわたっての「心の疎通」を描いた
人間ドラマ。実際は夫婦関係、教育問題、もう少し複雑な内容でありますが。
「親子」でだめなら、「友達」ならどうだ?という事で、同い年になった父と子が
「やり直しの現実」で出会い、誤解が解かれ、また衝突し合い、気持ちを深めて行くお話。
それと同時に、ワゴンに乗った『幽霊』父子の複雑な事情が絡み合って、実に
飽きさせない、好感度の高い正統派の成長物語です。

一見、コミカルなのですが、結構読んでいて辛いものが。。
一回間違ったからって、自分だけやり直せるなんて甘い、ズルい、なんて言っては少し
可哀想なんじゃないかな、と思わせる境遇ですね。だって、やり直しちゃダメでしょ。。
また同じ間違いを起こすのが人間だから。そこで、根本的な意識を変えて行く物語だったのが
凄く良かった。

自分は女性だし、父親もいないのでどうかな?と思っていたし、実際あとがきで斎藤美奈子さんが
そういうニュアンスの事を書かれていました。(その後で絶賛なさっているのですが^^;)
だから、女性でも、父親にも息子にもなっていない人でも、充分感動できる要素があると思う。
実際、これを読んだ人はきっと、自分にとっての「カズ」や「広樹」を連想したはず。
家族は当然の事、親友でもお世話になっている人でも誰でもいい。
私ももちろん何人かの顔を思い浮かべることが出来た。(正直、「知り合い、友人」の全てを
連想する事は出来なかったが、まあ、つまり、そういう事なんだろう。)
一生本人には言わないけど、きっと自分が遺言を書くなら名前を挙げる人達なんだろうな。


いい本でした。ハンカチ5枚は使ったね。(嘘)

ただねえ、すご~~~くベタなお話なので、誰彼かまわず薦めていいのかどうか^^;
自分も、もう少し文章はカタめの方が合うし、こんな真面目にやっといてそりゃないだろ!と
身悶えたくなるある人物の事実、がありました^^;;

他の本は読まないかも。いや、読むかな。。これぐらいいいの、他にあるかな?