綾辻行人著。角川文庫。
「J・Mを殺したのは誰か?」―巨大な才能と劣等感を抱えたマッドサイエンティストは、五人の子供に人体改造術を施し、“怪物”と呼んで責め苛む。ある日、惨殺死体となって発見されたJ・Mは、いったいどの子供に殺されたのか?小説家の「私」と探偵の「彼」が謎に挑めば、そこに異界への扉が開く!本格ミステリとホラー、そして異形への真摯な愛が生みだした、歪み真珠のような三つの物語。(裏表紙引用)
20.3.20再読書き直し。(再再読かな)
畸形と精神病患者をテーマにした、3篇収録の作品集。
「夢魔の手 ――三一三号室の患者――」
母親が入院する精神科病棟を訪れた予備校生。彼の母親は一年前夫を刺し殺し、精神に異常をきたした。母親が隠していた息子の子どもの頃の日記の内容は――。
狂っているのは誰?という感じで真相が二転三転する。誰でもありえるな、という条件の中落としどころは想像の範囲内だが、雰囲気があって良い。
「四〇九号室の患者」
崖から転落した夫婦のうち夫は死亡し、妻は両足切断の上顔に大やけどを負った。「わたし」は妻なのか、夫の愛人なのか?顔を確認出来ない状況が緊迫感を高める。きちんとミステリーになっていて、狂った感じも出ていて〇。
「フリークス ――五四六号室の患者――」
ミステリ作家のところに届けられた、精神病患者が執筆したミステリ短篇の「問題篇」。様々な畸形が出てきて怖さ満載。綾辻さんがお好きそうな、「孤島の鬼(江戸川乱歩」をイメージさせる作品。前2作と違う手法で、読者と登場人物を幻惑させるのは見事。
以上。
どれも横並びに良かったと思う。こういうフリークスものが好きだというのもあるが、どれもミステリーとして成立させているのがいい。日記の挿入が多くサクサク読みやすい。お手軽に恐怖を味わえるかも。