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枯葉色グッドバイ (ねこ4.3匹)

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樋口有介著。文春文庫。

元刑事の椎葉は、ある事件をきっかけに退職し、現在は代々木公園のホームレスとして日々を
一杯の冷酒の為に生活していた。そこを女性刑事の吹石夕子に見初められ、都内で起きた
一家惨殺事件の捜査に乗り出す。幸運にも難を逃れた一家の生き残りである高校生の美亜との
出会いが、椎葉の眠っていた頭脳と心に火をつけたがーーー。



冴姉貴が☆ふたつの絶賛本。


思う壷な気がしなくもないが、樋口さんにこれ以上の傑作ってあるんでしょうか……?
もう本書が「高みまで来ました」というレベル。
ストーリー、ミステリー、キャラ共に不満どこにもなし。
個人的には椎葉よりも柚木の方がタイプに近くはあるが、一本立ちしたキャラ、という意味では
椎葉の勝ちだろう。もういい年なんで「成長」されてもなんだか気持ち悪い。大人ならば
一貫したポリシーを持ち続けてくれるかだ。
辛い過去はお約束、明晰な頭脳と、女性にとって一筋縄ではいかないこの色気と、
ロマンのお好きな男性からも「なろうと思えばなれそう、でも出来ないけどね」的な
印象を持たれそうな格好良さ。

不良少女美亜、女性刑事の夕子という対極な女性キャラを主軸に持って来たのもいい。
不良はただの不良ではないし、堅物刑事も本当は好きな男には美人と思われたい。
女性の多面性を、二人のキャラを立たせる事によって見事に表現しきっている。
ミステリーとしても、ホームレス達と一般社会と両面から事件を結合させて
納得のいく無理のない構成。


ラストは「金田一少年じゃないんだから……^^;」と思ってしまいましたすいません。
だからまた椎葉に会えるんじゃないの?
……なんて考えてちゃ洒落にならないんですけど^^;;