すべてが猫になる

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小生物語 (ねこ4匹)

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乙一著。幻冬舎文庫


私は基本的にエッセイ本やちょっと絵本出してみました的なものは好きな作家でも買わない。
ブログの体裁的に作家読み体質人間のようであるが、完全にそうというわけではない。
作品には惹かれても、作家さん自身に興味を持つ、という事があまりないから。
だから、私がこういうエッセイ本を買ってしまう作家さんというのは
特別中の特別に好きな作家さんということになる。言っておきますが伊坂さんであろうと
舞城さんであろうとこういう事はしません。


乙一初のエッセイ本。ホームページで適当に書き散らかしていた『日記』がついに文庫化。
年代がどこにも書かれてないのでわからないが、とりあえず開設から閉鎖までの
164日間が赤裸々に綴られる。

とは言ってもこの日記に出て来る一人称の「小生」は乙一自身の事ではないらしく、
「本物とちょっと違う」乙一の事らしい。はっきり言って、これが乙一か!やっぱり変な人だった!と
思われそうな程、彼の作品から受けるその人間像とはかけ離れていない。
しかし、やっぱりここに綴られている事の半分は嘘だろう。本当に遭った事に虚飾をしているのだ。
こういうのが一番難しいんだと思う。
これが嘘である事が私にとってはなおさら凄い事だ。
狙っての事である、という事がもうそれがエンターテイナーとして本能的な資質を
備えているんだなと。
天才・乙一は実は努力家で真面目な作家さんだ、とどこかで言った覚えがあるが、
その思い込みが決してファンの盲目的なものではなかったと改めて実感する。


まあ、そういった小難しい作品じゃありません。
とにかく『ガクッ』『ガクッ』と来るおかしさ爆発本です。
面白いショートショートとしても読めるんじゃないかな。
これはもうエッセイというより立派に小説だと言いたい。