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崖の館 (ねこ4匹)

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佐々木丸美著。創元推理文庫

財産家のおばが住まう<崖の館>を訪れた高校生の涼子といとこたち。ここで二年前、おばの愛娘・
千波は命を落とした。着いた当日から、絵の消失、密室間の人間移動など、館では奇怪な事件が
続発する。家族同然の人たちの中に犯人が?千波の死も同じ人間がもたらしたのか?雪に閉ざされた
館で各々推理をめぐらせるが、ついに悪意の手は新たな犠牲者に伸びる。(裏表紙引用)


1977年より発表された三部作が創元推理文庫から復刊、本書はそれの第一弾だそう。
この作家さんについてまるで何も知らなかったため、若竹七海さんの書かれた解説を読んで
非常にびっくりさせてもらった。『早過ぎた新本格』とは何とぴったり来る表現だろうか。
決して読みやすいとは言えない、
地の文でも会話文でも徹底的に人格をさらけ出す芸術志向の登場人物達。
悪意と恋慕と嫉妬と、内面を吐露しまくる「異質」のオンパレード。
「読めないこともないが、ナンダコリャ??」と混乱した自分、本編を中断し、
唐突にあとがきを読み始めてしまった。

驚いた。驚いたぞ。
設定だけでも異質だと思っていた。こんな都合のいい、(だって館にいるのが全員いとこ同士って!)
「本格推理」におあつらえ向きすぎのシチュエーションがあるだろうか?
読者が推理を楽しむという意味で、
容疑者同士のミッシング・リンク、つまり動機を量るには不都合というデメリットもあるが、
これだけの登場人物の入り組んだ歪んだ人間関係が展開されていれば、いや、むしろ、
この方がずっと「事件のための後付け」作品より濃厚なドラマ性がある。


話が飛ぶが、私は一条ゆかり氏の傑作「砂の城」のような
「ジュテーム!フランシス!ジュテェェェェム!」という砂糖ガビガビのドーナツより甘い
目に星がいっぱい入った時代の少女漫画はさすがに鳥肌ものである。いや、お話は良かったが。
冴姉貴から「痒いですよ」と助言をいただいていた為てっきりそんな世界観なのかと
勘違いしていた。そうではない方の『少女趣味』だったので安心したというのもある。

しかし、私も若竹氏と同じで、かと言って「めちゃくちゃ気に入りましたー!!」という程かと
言うと違う気がするんだよなあ。。。
さすがに犯人の独白の文学講義?は辟易したし、登場人物の心理は痛すぎる。
人間が気に入ったわけでもすげえこのトリック!という程でもないけど、
なんだかよくわからないけど雰囲気が好きで読んじゃう。

創元って本当にハズレがないな。
このシリーズも早速買いに行こう。
姉貴、今回もありがとでしたv姉貴のブログはおいらの最高のミステリガイドブックです。