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百万のマルコ (ねこ4.4匹)

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柳広司著。創元推理文庫

黄金が溢れる島ジパングで、大冒険の末、黄金を捨てることで莫大な黄金を手に入れたーー。
囚人たちが退屈に苦しむジェノヴァの牢。新入り囚人<百万のマルコ>ことマルコ・ポーロは、
彼らに不思議な物語を語りはじめる。いつも肝心なところが不可解なまま終わってしまう彼の
物語。囚人たちは知恵を絞って真相を推理するのだが……。(裏表紙引用)



こっ、こ、こここ(ニワトリではない)これっ、好きー!大好き!!
実は本書、樋口さん新刊の隣にもたれかかっていた。ちょうど柳さんどれか1冊、と思っていた
矢先の為「これでいいや、シリーズじゃないみたいだし」といそいそとレジへ。
それがまあまあまあ、大当たりしたじゃないの!

内容はというと、連作短編集という体裁。雰囲気はといえば、創元推理文庫系の海外ミステリー。
戦争捕虜の憂き目に遭った囚人達が、マルコの不思議な謎かけに一人一人会話しながら挑んで行く
知恵比べゲーム。退屈な牢での生活から一瞬でも抜け出せると、マルコの「ホラ話」は毎回
ちょっとした人気を集めている。ちなみに、「百万」には「ほらふき」と言う意味があるらしいので
タイトルも「ほらふきのマルコ」と読むのが正解なんでしょうか。
不勉強にして「東方見聞録」は読んだ事がないのですが、まあ中学校で習う程度の初歩の
一般常識くらいがあれば問題なく設定には入り込めます。

「犯人は誰だ」「トリックは」というミステリではありません。
まさに知恵の輪をほどくように、発想の柔軟さが求められる楽しい読み物です。
「パズル一辺倒」というわけでもなく、ラストでは必ず”オチ”をつけ、くやしさ、おかしさ、
風刺、何らかの感情が生まれるように配慮が。私が一番惹かれたのはこの部分かも。


ここ数日、たいりょうさんが先じて柳さんに積極的に挑戦されている模様。
いずれも高評価で、「なぜこの作家さんはこんなに面白いのに埋もれているのか」という
発言をされていました。
この1冊しか読んでませんが、このレベルを他書でもキープされていると予想すれば
柳さんはかなりの掘り出し物かもしれません。ランキングや賞がアテにならないとまでは
思いませんが、本当に良いものってどこに転がっているかわかりませんね。