すべてが猫になる

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二人道成寺 (ねこ3.8匹)

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近藤史恵著。文春文庫。

恋路の闇に迷うた我が身、道も法も聞く耳持たぬー梨園の御曹司岩井芙蓉と抜擢によりめきめき頭角を
顕した中村国蔵。人気、実力伯仲するふたりの若手女形は、かねて不仲が噂されていたが…。芙蓉の妻、
美咲が恋したのは誰だったのか。意識の戻らぬ彼女をめぐる謎を今泉文吾が解き明かす。切なさが胸に
響く歌舞伎ミステリー。(裏表紙引用)


冴姉貴おすすめの文庫新刊。あまりの薄さに本屋で発見出来たのは奇跡と言えましょう。平積み
してよね(ーー;)。姉貴おすすめというだけの理由で買った。近藤さんは好きだけど今は
熱心に追いかけているわけではないからね。


そう言えば、近藤氏の歌舞伎ものを以前一作だけ読んだ。(「ねむりねずみ」かな)
正直それほど好みとは言い難く、女性キャラの心理のあまりの身近さ(リアルさと言わずに)に
思わず友達なら説教してやりたかったのは記憶に新しい。実際私が近藤氏でどこが好きかと
言われるとそこなのだが、もちろん本書もそこを期待して読んだ。後で読んだ「凍える島」は
物語としての面白さはあったがその点はあまりいい感触を得られなかったように思うので、
自分としてもいい具合に飢えていたかも。


本書は歌舞伎に精通していると噂の近藤氏が腕をふるって歌舞伎世界を描いてはいるが、
私のような「歌舞伎?なにそれ、野菜?」と言いそうな者でも読みやすく、
むしろ読む者によってはこの世界の魅力に夢中になってもおかしくない。
芙蓉の番頭である実と、女形役者である小菊の一人称の二重構成となっているが
どちらも明瞭で物語を掴みやすく、「心理の謎」という点で惹き付けられる。
最初に「なんだこいつ」と思っていた美咲も、一人称なのに心理が掴めない実も、
一人の人間から見た外側でしかなかったのだ。そこが氷解していくラストには痺れた。
氏の描く女性心理には改めて脱帽。リアリティはリアリティでも、この場合は
自分の携帯電話の向こうで繋がりそうな、会社の隣の机に座っていそうな、
身近なリアルである。あまり好意を持っていない人間でも、悩み眠れない日を過ごす事も
あるのだろう。知ろうとしない事に問題があるかは別の話。同じ人間だったら当たり前だ。

もちろん男性サイド、役者同士の心のミステリーと絡んで読んでこそ
物語としても素敵すぎる恋愛小説。おいらもお薦めします^^v

姉貴、ありがとです~^^読んで良かったなり~(*^^*)