すべてが猫になる

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高く孤独な道を行け/Way Doun on the High Lonely   (ねこ3.7匹)

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ドン・ウィンズロウ著。創元推理文庫

中国の僧坊で伏虎拳の修得に余念がなかったニールに、父親にさらわれた二歳の赤ん坊を無事
連れ帰れ、という指令がくだった。捜索の道のりは、ニールを開拓者精神の気風をとどめる
ネヴァダの片隅へと連れ出す。不穏なカルト集団の陰が見え隠れするなか、決死の潜入工作は
成功するのか?悲嘆に暮れる母親の姿を心に刻んで、探偵ニール、みたびの奮闘の幕が上がる。
(裏表紙引用)


ニール・ケアリーシリーズ第3弾。
結構読んだ気がするのにまだ3作目だったのか、自分^^;
中身が濃いシリーズだから錯覚しちゃうのね。

今作は、「あ、やっぱ第2弾が最高傑作だったんだな」と思ったけれど、
シリーズとしてのキャラの動き、深みという点では一つの域に達している気がする。
あまり頻繁に登場しないニールの義父グレアムと、憎まれ役のレヴァインが、ニールにとって
どういう存在か、彼らにとってニールがどれほど大事な「子供」かが浮き彫りになって来た。
ニールと、ニールと離れた場所にいるグレアム達の台詞が読む者の心に痛い。
これが本当に血の繋がった親子だったらここまで効果はなかったんじゃないかな。
大げさな抱擁があるわけでもなく、お互いに伝える言葉があるわけでもなく、
この適度な距離感から伝わる感動は並の作家には表現出来ないだろうと思う。

後、「潜入工作」を実践している恋するニールの心の内と、台詞とのコントラストが
本シリーズの長所であり、大きな魅力であると思う。
第二弾では「自分を愛してない」と言い放ったニール。
ニールが成長するごとに、心の葛藤と闘う姿が痛々しさを増す。
人間、変わらなくていいものは絶対に存在する。

自分の心が空洞ではない事を自覚して来た彼が最後に選ぶものは何だろう?