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ギブソン (ねこ3.5匹)

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藤岡真著。東京創元社ミステリ・フロンティア

果たして彼が向かったのは右の道か、それとも正面の道か?ーー八月二日午前六時、待ち合わせの
場所に高城秀政は現れず、そのまま失踪してしまった。敬愛する上司の行方を追う日下部の前に
次々現れる、奇矯な人びとと不可思議な事実。町内に出没する謎の消防車、血痕を残して消えた
老人、生き別れの娘、正体不明の脅迫者。それぞれがパズルのピースのように結びつき始めても、
杳として知れない高城の行方。大量のレッド・ヘリングに翻弄されながら、遂に日下部が直面した
驚愕の真実とは?(あらすじ引用)


登場人物多すぎ。語り手は変わらないのに章ごとに新しい人物が登場し物語が進む。もう誰が
嘘をついているのか、果ては誰が喋ってる台詞なのかすら混乱して来るのは問題だと思う。
結末があまりにも普通に考えられる事だった為に、今までの氏の作品と違って
「余計な伏線」「過剰なミスリード」が本当に「余計なもの」に映ってしまったのはらしくない。
「意外な犯人らしい犯人」を演出する為ならば粗すぎるだろう。
まあそこはサラッと流し、主人公の人生観や上司への思慕、人生哲学をほろりと味わうには
やっぱり本書にはそれなりに藤岡氏のらしさがある。しかし残念ながら個人的に、
仕事の出来に「過去の栄光」を引きずって現状に甘んじている点や、「尊敬出来ない上司」には
必要以上の反発を持って「結果主義」だと食ってかかる主人公の人間性に面白味は感じられない。
仕事の内容に貴賤をつけ自分は出来る男だからと「捜査」を名目にサボっているだけじゃないか。
そんな彼にはこの真相は酷だろう。。要は甘いのだ。

そういう感じで3作目は「まだ新人」のイメージが残った。
でも、おいらこの人それでも嫌いじゃないんだよなあ。。