伊坂幸太郎著。新潮社。
待ちに待った伊坂さんの新刊(その割に読むまでが遅い)は表紙とタイトルからして
『ラッシュライフ』の続編のような佇まい。でもリンクが多いというだけで『ラッシュライフ』を
読んでなくてもさほど支障はないように感じます。
では、良かった順に感想。
『フィッシュストーリー』
売れない無名のロックバンドが最後に録音したアルバム。その最後の曲には約1分間の
無音部分が収録されていた。。
今の時代、自分達でレーベルを作りアンダーグラウンドな音で十分通用しているバンドも多い。
メジャーとインディーズの境界が曖昧になって、ヒットチャートに名を連ねる者と彼らが
共存して行きつつある現代ならば、この作品の主人公である彼らも日の目を見たかもしれない。
要はそういう作品じゃないかな?
上手だね伊坂さん。敏腕プロデューサー、彼らのマネージメント役の岡崎さんの役どころを
きっちり作り上げてる。さらに彼ら自身の台詞や行動から音楽性が伝わって来てちゃんと届く。
『ポテチ』
『ラッシュライフ』のあの彼が登場。あとのキャラはあまり覚えていませんT_T。
ドタバタとおかしく有り得なく、いかにも伊坂さんのお好きそうなお話。ラストはまさか
こんなストレートに来ると思いませんでしたが、いい台詞があったので相殺。
若葉と今村のお母さんとのやりとりが絶妙です。
『動物園のエンジン』
1編目に収録されている、伊坂さんのデビュー第一短編です。文章などに全く違和感が
なかったのが意外に良かった。ここからもうリンクが始まっていますね。先日
『ラッシュライフ』を再読していたおかげですぐわかりましたが、実は再読していて
得した、とは思えなかったんですが^^;自分は伊坂さん作品のキャラにはそれほど
思い入れないタイプなのでそれでかな。
ところで、いきなりミステリーです。一瞬あせりました(^^;)。。
『サクリファイス』
『ラッシュライフ』のあの人が登場。おおお、ミステリーだ。閉鎖された村の隠された
秘密系だ(笑)。伊坂さんがこういうのを今描かれるのは意外でしたね。人間関係が
逆転して行くくだりの哀しさや全体的な流れは『ラッシュライフ』というよりむしろ
『オーデュボンの祈り』に酷似しているように感じます。
なんせ、昨日読んでいた本が『グロテスク』ですからね。結構甘い評価になったというか、
どれもうっとりとしんみりと楽しめたのはそのせいかどうか。。^^;