すべてが猫になる

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グロテスク (ねこ3.7匹)

桐野夏生著。文春文庫。


桐野さんはかつてドラマ化し話題を集めた衝撃作『OUT』以来読んでいない。もう著者を読む事は
ないと思っていたが(いや、『OUT』は面白かったのよ)先日taketakeさんが本書を紹介されていて
それで興味を持った。

女性同士の確執、人間の悪意。それを描かせたら天下一品と噂(作るな)の桐野さん。
お嬢様学校から有名大学へ進学、一流企業でキャリアウーマンとしてばりばり働く和恵。
スイス人の父と日本人の母から生まれた美貌の持ち主、ユリコ。
そして血の繋がった姉妹でありながら妹とは似ても似つかない風貌に生まれた「わたし」。
和恵とユリコが客を直引きし、数千円で身を売る娼婦になってしまうまでの顛末、
そして二人が同じ男性に殺害されるまでの経緯。
主要な語り手である「わたし」から見た彼女達の人生と、「わたし」の悪意。
それらが余す所なくこの上下巻の長い物語に描かれ尽くされている。

いやあ、とにかく濃密でしんどい作品だった。これを一気読みする体力がなく、ちびちびと
読み進めたつもりがいつのまにかうるさいBGMそっちのけで熱中して読みふけったから凄い。
まさに悪意と嫉妬、羨望のオンパレード。友人同士の会話のなんと腹黒い事。
ここにあるのは憎しみのぶつけ合い。性格の悪い登場人物しか出て来ないのが凄い。

女性の視点から見ると、少しは理解出来るものだろうか。実は自分には全く彼女達に
共感出来る物が見つからなかった、と言えば格好をつけすぎだろうか。
自分は1人の男性に愛されたいし、友人とも内面を認め合って交際がしたい。
性欲だって人並みにあるが、毎日セックスしたら飽きないか?相手が変われば、という
問題ではもちろんないし。どうも本書の内容は極端なんだよなあ~。そりゃ自分は美貌の
持ち主ではないしお嬢様でもないし生まれた境遇が彼女達とは違うんだけど。。
かと言って娼婦を蔑んでるわけではなく、同じ女性としてどこか共感出来る点があればなあ、と
思いながらそれでもやっぱり本書に惹き付けられて読んだのだけど。


とにかく、不快と言うより凄いと言った方がいい小説。充実感はあるが、軽く読もうとすると
もの凄い精神的ダメージを受けます。。
でも面白かったのでまた桐野さん読もうかな。 ←つよい