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影踏み (ねこ3.7匹)

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横山秀夫著。祥伝社文庫

家人が在宅している間に忍び込んで盗みを働く、プロの泥棒である通称「ノビカベ」、真壁修一。
二年のお勤めを終えて内縁の妻・久子に会いに行くが、最後の一線が越えられないでいた。
その理由は、母に焼き殺された弟がいつも彼の内耳に存在しているためだろうか。。
7編収録の連作短編集。


うおお、以前あまりすさんの所で記事拝見してて本当に良かった、助かった。
なぜかって、主人公の耳に弟が存在するなんていう非科学的な設定だと知らずに読んでたら
自分入り込むまでにどれだけ苦労したかと思うと^^;;しかも主人公が泥棒だもんね。
おいらの苦手な「犯罪者主人公」^^;;;
そもそもこの設定が当然の状態として話が始まってしまうので、事件も起きるし
恋愛もなんだか盛り上がるしそこで引っかかってたらもったいない。
犯罪者がたくさん登場するのですが年季の入った人々ばかり。それぞれに「割らずの○○」
だとか「音無しの○○」だとか符丁がついてるのもなかなか面白いのです。

しかし、なんだか物足りなかったのは事実。長編小説のような短編集なので
事件はそれぞれ孤立しつつ後の作品で色々繋がって行きますが、それと「双子の心の繋がり」が
独立しているような関連があるような。
「もっと細かいエピソードが読みたかった」「もっと最後盛り上げて欲しかった」という
物足りなさ、なので要は気に入ったんだろうな。常に冷たい風が吹き付けているような
物語の雰囲気がなんだか切ない。
とにかく『業火』と『使徒』は泣けます。
ノビカベさん、貴方がそんなに優しい人なら早く足を洗おうね。