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ペルシャ猫の謎 (ねこ3.6匹)

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有栖川有栖著。講談社文庫。

火村・有栖川の名コンビが活躍する「国名シリーズ」第5弾は7編収録の短編集。
 
”壁”、”損”と悪評高い本書ですが、なかなかどうして楽しかったです。
「えー」とか言わないで下さい^^;、これが壁ならおいらにとっちゃ「英国」こそが壁です。。

1編目の『切り裂きジャックを待ちながら』の設定、雰囲気はなかなか不気味で本格ファンには
垂涎の死体発見シーンではなかろうかと。
ただ、「え、、それが真相?」と(ーー)←最後はこんな顔になるぐらいで。。。

2編目の「わらう月」なんてオカルトチックな語り口がたまらないじゃないですか。
ただ、「それが決め手はないだろう火村さん、犯人も簡単にそれで落ちるなー!」と
(ーー;)←こんな気分になるぐらいで。

3編目の「暗号を撒く男」なんてエラリー・クイーンさまさまな遊び心が楽しくてよ。
ただ、まさかそれだけがやりたかったお話だとは夢にも思いませんでしたが。

4編目の「赤い帽子」はなんと森下刑事が主役を張るので新鮮ですね。これはちょっと
異色で、サスペンス味が強いです。論理で犯人を追いつめるスタイルは健在です。
ただ、駄洒落だと言えば厳しいかしら。このラストは微妙に失敗しているような。。

5編目の「悲劇的」は学生の論文に焦点をあてているお話。これも今までのシリーズでは
見られなかったもの。新しい事に挑戦?
まあ、最後の1行に期待したおいらが悪いのさ。。

6編目の「ペルシャ猫の謎」。表題作ですね。有栖川さんのファンだという男が
被害者です。物語的にはさくさくと軽妙にとても有栖川さんらしい作品なのですが。
双子ネタのこれも許しがたければ、この開き直りオチもどうかと思われる。
何かがしたかったんだろうな、と思わせちゃだめでしょ。オカルトに徹した方が
かえって良かったのでは。。

7編目の「猫と雨と助教授と」。これはわずか数ページの短編。ミステリではありません。
ファンサービスかな?火村フリークならちょっと意外な一面が見れて良いのかも。
しかし、唯一「でも」が出ない作品がこれだけとは。。。



以上でーす。好き順位はほぼ収録順通りかもしれませぬ。
有栖川さんの持ち味(冴え渡る論理)が全然生かされていない、特殊な1冊。
キャラに愛着のあるファンの方だけにお薦めします。

でもおいら、物語としてはどれも楽しめたんだけど。。
馴染みのある地名がいっぱい出て来るし、学生アリスよりこっちのアリスの方が好きだし、
ちょっとドラマチックな展開がつぼなんですよねー。おかしい?^^;