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仏陀の鏡への道/The Trail to Buddba's Mirror (ねこ4.3匹)

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ドン・ウィンズロウ著。創元推理文庫

ニール・ケアリーシリーズ第2弾。
1977年3月。ヨークシャーの荒れ野に隠栖していたニールの元に仕事が持ち込まれた。鶏糞から
強力な成長促進エキスを作り出した有能な生化学者が、1人の姑娘に心を奪われ、新製品完成を前に
長期休暇を決め込んだらしい。香港、そして大陸へ。文化大革命の余燼さめやらぬ中国で、
探偵ニールが見たものとは?(裏表紙引用)


キャラが完成している。展開が読ませる。ユーモアのある粋な文章。情と哀愁と涙と感動。
全て揃ってこのシリーズ最高だ。
前作で「でもお洒落ではないな」と思っていたのもどうやら当たっていたらしい。
この作品の読みどころはニールとその通訳係の紹伍の会話だと思うが、いやはや、
下品だ(^^;)。れでーの自分はとてもここに書けやしないような決め台詞がふんだんに
物語の要所要所で有効に機能していて、「う、うまい!」と思ってしまってそれがまた
困りどころ。こういう所が、「そつなく、完璧」なものに加わるプラスアルファになるから
作家の力量について他と一線を画すんだよな~。
最後の意外性と小道具のうまさ。おいらうるうる来てしまったですよ。

キャラが完成している、というのは自分の場合、「完璧」という意味とは離れている。
「今後動いて行く」「過去を携えている」という実感が湧くかどうか。
だからニールもまだまだ成長途中。生い立ちの背景が重過ぎる事と、現在の境遇は無関係でない。
荷物を降ろして全てなかった事には出来ないというあまりに哀しい後ろ側にある雰囲気。
これから何が彼の身に起きてもいいけど、
「僕だって僕を愛してないんだ」
これだけは変われよニールちゃん。