すべてが猫になる

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11の物語/Eleven (ねこ4.1匹)

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パトリシア・ハイスミス著。ハヤカワ文庫。

たまたま台所にあったボウルに入っていた食用かたつむりを目にしたのがきっかけだった。
彼らの優雅かつなまめかしい振る舞いに魅せられたノッパート氏は、書斎でかたつむり飼育に励む。
妻や友人たちの不評をよそに、かたつむりたちは次々と産卵し、その数を増やしてゆくが……
中年男の風変わりな趣味を描いた「かたつむり観察者」をはじめ、著者のデビュー作である
「ヒロイン」など、忘れることを許されぬ物語11篇を収録。


パトリシア・ハイスミスの名前だけはもちろん知っていたが、「サスペンス作家」という
イメージがあったのでなんとな~く敬遠していた作家の1人。本書もやはり「サスペンス」という
ジャンルに括られるのだが、読んでみて「あれ?これは?」という感じ。サスペンスでもホラーでも
もちろんミステリーでもない。その中で選ぶならそりゃ「サスペンス」と言うしかないと思うには
思うが、どれも内容が重たく人物が「ヤバい」というだけでこれは普通の文学じゃないだろうか?
いや、別に文学の方が偉いとかではないが^^;、紹介の仕方によって出会いが遅れたり
するのも何だな、とふと思い。。ていうかこの書庫に入れているあたり矛盾している自分^^;

と言う事でネット友人の紹介を受け、「ハイスミスならぜひこの本から!」と早速入手。
重いんですって。暗いんですって。きゃー!! ←変態
実は1話目の「かたつむり観察者」を読みどうしようかと思う。
虫ネタもグロより嫌いだけど、軟体動物ネタはうなぎよりもホタテよりも嫌いな私。
まさか一発目からこんな目に遭うとは夢にも思わず^^;。ぐえ~~。。。
(実はもう1編かたつむりネタがあったのですが、それも読まなかった事にして。。)

うん。確かにこれは重い。いや、暗い。そして登場人物がかなりどれもキている。
人物描写が上手いと言う事に他ならないが、心理描写で筆を進めている物語が圧倒的に多い。
特に『ヒロイン』(これがなんとデビュー作!?)の主人公の精神の流れは秀逸だった。
先は読めるのだが、メイドの母親の事情という伏線が精神的にも論理的にも上手く
整合している秀作。次に気に入ったのは母親に虐待を受けている少年がすっぽんを
目撃するお話、タイトルも『すっぽん』。サスペンスならばこういう結末にはならないと思う。
そういえば、
海外もの派の読書家さんが時々こう発言してらっしゃるのを聞く。
「海外もののコレを読んだら国内もののアレなんて読めない」。

そうか、アレはこういう時に思う台詞だったんだな。



どうでもいいが、今気付いた。表紙にかたつむりがいる!