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落下する緑 <永見緋太郎の事件簿> (ねこ4.3匹)

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田中啓文著。東京創元社

テナーサックス奏者の永見緋太郎に目をかけているのは、彼とは10も年の離れたトランペット奏者の
唐島。ジャズクラブ、絵画展、行く所行く所で事件に遭遇してしまう唐島だが、全て持ち前の
独特の洞察力で謎を解明してしまう永見の存在は離せないものとなった。7編収録の連作短編集。


さっすが冴さんだ。ゆきあやの好みわかってる~ぅ。(*^^*)

著者のお名前はお仲間の至る所でお見かけするものの(しかも大盛況)、ものすごい、ノーコメントと
しか言いようのないエキサイティングな表紙やグロいだのギャグ連発だのという恐ろしい情報も
耳に入って来て「こりゃ自分が読む作家じゃないな。。」と早々に退散していた。
でもなあ、読まず嫌いは犬でも食わんと言うし(言わん言わん^^;)、、と言う事で
「ゆきあやならこれは良いのではないか」と冴さんにご教示いただいたのがこれ。
今年のなにかのランキングでも入っていた模様。
評判に踊らされず、いつもご自身の目で良書をハンティングする冴姉貴に
私は全身で信頼をおいている。

そんなこんなで大当たりじゃ~~~~~~。
たしかに自分はジャズやブルースには疎いし即興の演奏やアドリブの楽しみもいまいちわからない。
だけど本書で登場人物のジャズへの愛情や作家のジャズへの造詣の深さはなんとなく伝わって来る。
緋太郎のなんだか変人だけど「本質を一瞬で掴む」性質は作家が元々人生で得た様々な真実を
代弁しているからしごく真っ当で生きたキャラが完成しているのだろう。
そう思うと、設定が変わるとどうなのか、といらん考えにも取り憑かれるが
本書においては田中氏のテンポのよい文章と人物作りは好きである。

いずれも感動する性格の物語ではないし、伏線も比較的易しい上に「アッ」と驚くような
仕掛けや真相はない。しかし、これがいいのだよまた。。世界観のユルい完成度と(確信的な)
そこがベストマッチ。気軽に読むつもりが全編一気読み、ゆきあやのハートをがっちりキャッチ。

「こういう系統のものがあれば」という条件で他のも読みたいス。(^^;)