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インディゴの夜 (ねこ3.4匹)

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加藤実秋著。東京創元社ミステリ・フロンティア

『クラブのような』ハコで、DJやダンサー『みたいな』男の子が接客をしてくれると
いう一風変わったホストクラブ。女性ライター高原晶の提案にノったのは彼女の知人で謎めいた美形・
憂夜。彼の協力で、渋谷に本当にそんなホストクラブが出来上がってしまった。経営は順調だったが、
次々と難事件が発生。晶は店の男の子達と共に奔走する。
第10回創元推理短編賞受賞作含む4作収録の連作短編集。スタイリッシュでウィットあふれる
新世代探偵小説!(あらすじちょっと引用)


これはなかなか設定も目新しいし、イケメンが登場する小説も大好きな自分にとって
今月の大当たり本になるはずだった。ホストクラブは一回しか行った事がないがいやはや
凄い世界だった。大阪で一番有名なお店でNo.1の男の子をテーブルに呼んでもらったのだが
さすがNo.1、店に来て2時間以上でやっとこちらに登場。
あちこちのテーブルでひっぱりだこの彼はまさしく「風のように現れて風のように去ってしまった」
(1分くらい)のだが、ほんの一瞬のトークとリアルにそこにあるオーラ、
それだけで客の心を掴み強烈な印象を残して行った事は鮮明に覚えている。
だからホストクラブの内情などに興味がないわけでもない。むしろノリノリで探りたい。
いや、別に二度と現実では行かないが^^;。

前置きが久々に長くなった。
私は出だしで躓くと結構最後までそれを引きずってしまう。主人公が女性であった事に
なぜかがっかりし、「スタイリッシュ」で「ウィット」な感覚が文章のどこからも
感じられなかったのがまずノレなかった一因。はっきり言えば文章が少し退屈である。
ホスト達の源氏名もかなり遊び心に長けていて、名前を見ているだけで楽しいようなものだが
肝心の個性が見えて来ない。それぞれに特徴もありお話によってスポットも当たる
1人1人のホスト達。私は文章で個性を「説明」されるのは我慢ならないのだ。

しかし、冴姉貴によるとミステリ・フロンティアはなかなか傑作ぞろいだと言う。その言葉を信じ、
我慢してとりあえず1話目だけでも読みきってから続きを読むか決めよう。
そうするとやはり、なかなか良かったのだ。
ノレなかった理由は今でも撤回しないが、全編通して読むと物語の良さがよくわかる。
まず「事件ありき」で、後半にストーリーを読ませるスタイル。若干くどくベタであり、
どこがスタイリッシュなのかは疑問であるが(設定はたしかにそうだと思うけど)
なぜだろう、どのお話も心に残る。

でも自分が何を求めていたかというと、物語の良さは当然として
「描いてある通りに彼らに対して自分もそう感じるか」なのだ。

評判通りにお薦めのしやすい良い作品集だとは思うが、続編を読むかどうかは微妙。