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風の万里 黎明の空 (ねこ4.4匹)

小野不由美著。講談社文庫。

芳国・公主であった祥瓊は民にとって非道の王であった父と母を恵州候月渓に惨殺され、祥瓊も
座を奪われ蓬山の農村へ追いやられた。自らを憎み、父の子という事で苛められる日々さえも
憎んだ。一方、蓬莱から海客として才国に流されて来た鈴も辛苦の日々を過ごしていた。
二人の少女の願いは景国の王、陽子との対面。それぞれの思いを胸に二人は慶国を目指すが、
海客として無知なまま王となった陽子は麒麟である景麒に政治を任せるしかなく、
やがては己の不甲斐なさを恥じ、遊学を決意する。



十二国記シリーズもノリにノって、一話目で登場した陽子に再びスポットが当たります。
不詳ゆきあや、上下巻の大作を読み切りここで二度目の爆発。
く~~~~~~~~~~っ。(T^T)

色々と知っているキャラが出演した事も浮かれ要素に入りますが、本作でシリーズ大作として
大噴火を起こしましたね。このシリーズ、キャラの魅力も取り沙汰いたしておりますが
何と言ってもストーリーの良さが極めつけの長所ですから。

単純に辛い境遇に置かれた人間が「ただの不運だった、だって天使のようないい子なんだもの」
を前提とした「でも幸福になって良かったね」的な物語でないのが私の好みです。
運命を受け入れ、己のレベルを自覚する事。そしてそれを、お互いがプラスマイナスで
「補い合う」のでなく、学び合って自らを高めた上で初めて信頼関係が生まれる。
少女達が他人の言葉によって諭された「過去」が今、現実となって本当の意味で思い知るさまは
本当に見事の一語で、感動的ですらありました。
その物語の上にもう一つ別の物語があって、それが不甲斐ない王として君臨してしまった
陽子です。元々個人的に彼女には好感度が高かったですから、真に注目すべきは
こちらでしょう。シリーズの作風を鑑みても「精神的に成長して行く」性格のものだというのは
当然と言えば当然。もちろんこう終わるべきです。実は感動しすぎて言葉もないのですが、
もう「陽子ちゃん」とは呼べなくなったのが嬉しくなった!
自分も読みながら一緒に闘ったつもりだけど、軽々しくは呼べないやね。
景王ばんざーい。