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破線のマリス (ねこ3.6匹)

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野沢尚著。講談社文庫。第43回江戸川乱歩賞受賞作。


首都テレビ報道局のニュース番組で映像編集を担う遠藤瑶子は、虚実の狭間を縫うモンタージュ
駆使し、刺激的な画面を創りだす。彼女を待ち受けていたのは、自ら仕掛けた視覚の罠だった!?
事故か、他殺か、一本のビデオから始まる、超一級の「フー&ホワイダニット」。(裏表紙引用)



問題作は言い過ぎだが、「超一級の傑作」は明らかに言い過ぎだと思う。
題材そのものは乱歩賞が飛びつきそうな「報道の自由、その危険性」にスポットをあてた重厚なもの。
前半は主人公の瑶子が仕掛けたギリギリの「作為の加害者」が報道の被害者に転じてゆく様、
獲物をしとめる側だった瑶子が逆に追いつめられてゆく様に緊張感があり、引き込まれる。
おかしくなるのは^^;中盤以降。
主人公に魅力が全くないのが致命的だと思って読んでいたが、なぜなら主人公である瑶子が
夫と子供を捨ててまで成し遂げたかった仕事、それが瑶子という女性の真実、人生そのものだと
描き切り、トラブルを自らの手で撥ね除け前進していく物語だと思っていたから。

報道の内容に若干、或いは大幅の虚飾、虚実があるのは現代人なら承知の事だろう。
「報道の裏側を切り取った」と言われる程のものでもない内容のような気がする。
それでいて、ラストはこれはないだろう、と読者が憤りそうな破綻ぶりである。
ならばと「なんだ、こういうお話だったのか!」とでも言いたいが
どういうお話しなんだこれは?

好き嫌いが分かれると書くのもなんだか語弊がある。
「これだけ読者がいれば誰かが気に入るだろう」的な。
その誰かのうちの1人はたとえば自分なんだけど。。。