すべてが猫になる

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子盗り (ねこ3.5匹)

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海月ルイ著。文藝春秋

京都市は山里の屈指の旧家に嫁いで来た美津子は、子供に恵まれず夫の陽介と共に13年間
不妊治療にあたって来た。いつまでも跡取りを産めない美津子に身内の容赦ない激が毎日飛ばされる。
治療のストレスと重なりノイローゼ寸前だった美津子だが、ある日親類が集まる席で妊娠したと
告げる。そしてある夜、大阪のレディースクリニックへ赴いた陽介と美津子はーーー。
第19回サントリーミステリー大賞・読者賞ダブル受賞作。


むむう。。。面白いんだけどなあ。。。

プロローグの引き込む力といい、先の読めない展開といい、人間の冷酷さと哀しさを描いた
世界づくりといい、まったく褒めるところしかないように感じる。
なのに、読みながらずっと感じていたこの違和感、ズレのようなものは一体なんだろう?
その正体に気付けないまま読み終わってしまったが、この結末を読んで「まあ、こんなところだろう」
ぐらいの感想しか持てなかった事が違和感の存在を立証している。
「超」がつくほど面白かったのにですよ。
端折りすぎなんですよね。。全体的に。ひっくりかえせばそれが本書の長所に成り得た
「テンポの良さ」「意外さ」「無駄のなさ」。次々登場する邪魔者、理解者、協力者。彼らの
背景があまりにも見えて来なさすぎる。唐突で不親切。基本神の視点だが一応章によって
主遇者が変わるのだからその「つながり」は「ぽんぽんと」進むべきじゃない。
結局あんた誰だったんだ?という人物、出さなくて良かった人物が今になると明確だ。
そしてこのエピローグは賛否両論ありそうだ。
自分は「否」という程でもないが、
「まあ、物語だから」とか言っちゃいけないんじゃない?これ。
倫理的にどうとか言いたいんじゃなくて、物語的にどう解釈すればいいのか、
表現としての落としどころがこれじゃわからないんですよ。


面白かったんですよ、これでも^^;