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死ねば いなくなる (ねこ2.8匹)

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東直己著。角川春樹事務所。

経営する奈津子の喫茶店の馴染みになった高校生が、最近ストーカーに狙われていると言う。少女は
容姿のぱっとしない地味なタイプだ。奈津子は次第に相談を持ちかけられるようになったが、なんだか
おかしい。。(『困っている女』)、ススキノにある中華料理屋に勤める青年達はオヤジさんに
一目置かれ将来を期待されていたが、1人の青年に起こったあるトラブルが予期せぬ事態へ。。
(『梅雨時雨』)、タウン雑誌を出版している小会社に勤める木村は一児の父。彼がバイクで
事故を起こしかけたあの時から記憶に変化が。。(『死ねば いなくなる』)、
「俺」が乗ったJRの車内で、おかしな行動を取る人間ばかりに出くわし。。(『路傍の石』)、
裏ビデオに出演していたのは伸之とその妻・真奈美がバーで出会った女性と同一人物に見えた。
性に開放的な夫婦はちょっとした好奇心からその女性に接触を試みる。(『ビデオ・ギャル』)、
娼婦と常連客である大学生の間に純粋な愛が芽生えた。彼らの取った行動とは。(『逢いに来た男』)
6編収録の短編集。


あれ?^^;先日あんなに盛り上がっていた東さんへの熱が冷水を浴びたようにクールダウン^^;
一応舞台はススキノであるものが多かったけれど、シリーズものとは何の関係もなさげな。
それは別にかまわないとしても、ちょっと自分の期待したものと違いすぎたのでびっくり。
全体的にオカルト(と言っていいのか?)で幻想的なストーリーが特色で一貫性はあるものの
これでは「曖昧」な印象しか持てないよー、といった作品が多かった。
敢えて好みと言えば「困っている女」だが、これじゃ怖くないんで^^;
纏まっているのは「梅雨時雨」だが、ギリシャ神話が浮いているような。
「死ねば いなくなる」はネタ的にはいいのだけど主人公の精神が書ききれなかった?
路傍の石」はありがち。
「ビデオ・ギャル」はエンドレス系の迷宮もの。面白いけど好きじゃない。
となれば、やはりしっくり来たのはラストの「逢いに来た男」だろうか。
しっとりと濡れた大人の恋愛である。引き裂かれる二人、という程の障害ではないと思うが、
人生経験の豊富さと純粋な愛情が切なく全てを投げ出せない葛藤をうまく描いている。
全編共通するオカルト要素が浮いていない。これだけ数年後に書き下ろしたんじゃないかと
思ったが全くそんな事はなかった。。

むむう。。いや、これを読んで前回が気の迷いだったとかそんな事を言うつもりは
さらさらない。全く別物だけどあの作家が描いたものだという感触は一応ある。
素通りするほどつまらなくもないし、もっと後に読めばそれなりに発見もあるだろうから。
ただ、これを最初に読まなくて良かったなあ、と心から思った。。