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向日葵の咲かない夏 (ねこ4.5匹)

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道尾秀介著。新潮社。

小学4年生のミチオのクラスメート、S君が自宅で首を吊って死んでいた。S君はいじめられっ子で、
自殺と見られる遺体の発見者はミチオだった。慌てて担任の岩谷先生に報告、警察が乗り出したが
首吊りの痕跡はあるものの肝心のS君の遺体は消失していたという。
やがてミチオの家で、蜘蛛となって生まれ変わったS君が出現した。S君の死因は何か?


これはまた、随分と目を見張るセンスと技巧を持つ作家の登場じゃないか。
先ほど読み終わった今、私は非常に興奮している自分を感じている。
見せ方と「隠し方」が卓越している。ホラーとミステリーを融合させたものはそこのバランスが
難しくなかなか成功している作品に出会えないのが常だったが、やっとそれをクリアしている
作品を読んだ気がする。

実は最初からの印象は良くなかったのだ。貴志祐介ほどの読ませる力、乙一ほどの乾燥感、
小川勝己ほどのなぎ倒すパワーが感じられず、またこういう「雨後の筍」がボコボコ出て来たのかと
文章の稚拙さも手伝って入り込み辛かった。今思うと全く自分の不徳としか言いようがない。
確かに、物語全体に漂う現実の悲壮さや倫理観を無視(故意だろうが)した不快な大人の悪意の
垂れ流しにはうんざりしていたが。。これも今このラストシーンを読むと見事に機能しているのが
わかる。ここなんです、融合の難しさというのは。

とにかくこれは読んでくれと言いたい。作者の何気なく新しい言葉の手法と、フェアでありながら
全く読者の意表をつくアイデアにきっと感嘆してもらえるはず。
最初に凄い作家を引き合いに出してしまった。確かに天才だとも実力派だとも思えないが
道尾秀介が持つのは彼らとはまた別の、光る才能なんだろう。


P.S. 姉貴!大当たりです!お薦めありがとうござりました~^^v
     「シャドウ」が楽しみっス(*^^*)